※2023年5月8日13時10分更新。
金、Gold、史上最高値更新―トーキングポイント



金融政策の不透明感解消。金融不安や債務問題はプラス
日米欧の中央銀行(日本銀行、FRB、ECB)による金融政策決定会合が終了した。日本銀行は当面の金融緩和維持、FRBは利上げ停止、ECBは利上げ継続を示唆する結果となった。依然として今後の金融政策の不確実性は残るものの、一時に比べ金融政策の不透明感は解消した。利上げ停止が示唆されたことは、金利上昇に伴い価格が下落する傾向のある金価格にとってはプラスであろう。金利が付かない金は、米国金利上昇(低下)局面で相対的な魅力度が減少(増加)し、金価格が下落(上昇)する傾向がある。
米国地方銀行を中心とした金融不安が高まっている。金融不安の高まりは安全資産である金価格にとって上昇圧力となる可能性がある。イエレン米財務長官が米国議会が米国債務上限問題を解決できなければ、「憲法上の危機」と警告している通り、米国の債務上限問題の期限が近付いている。米国議会が債務上限引き上げ、もしくは上限の適用を停止しなければ、6月~8月に米国が債務不履行に陥る恐れがある。最終的には債務上限引き上げで議会は合意すると見られるものの、合意するまでは米国の信用力に対する懸念が高まる可能性がある。米国の信用力が低下した場合は、安全資産である金への逃避需要が高まり、金価格の上昇圧力となる可能性がある。2011年の米国債務上限問題の際に、債務上限の期限である8月2日前後にかけて、金価格は上昇したが、テクニカル分析を踏まえた金価格の今後の見通しは?
金価格(XAU/USD)2011年米国債務上限時の動き

資料:Trading View。2011年6月27日から2011年9月15日の日足チャート。
金価格(XAU/USD):史上最高値更新が迫る
金価格(XAU/USD)は一時史上最高値更新し、1トロイオンス当たり2,081ドル台を付けた。その後、2,000ドルを挟んでの攻防が続いているが、5日の市場予想を上回る米国雇用統計の結果を受け、米国金が上昇する中でも2,000ドル台を維持したことは、2,000ドルがサポートラインに転換しつつあることを示唆している。強固なサポートラインに転換した場合、金価格の下値は限定的となり、一段と上昇する可能性が高まろう。金価格の週足チャートを確認すると、9、20、50、200期間移動平均線が上から順に並ぶ強気の「パーフェクトオーダー」が成立している。
金価格(XAU/USD)週足チャート

資料:Trading View
日足チャートでは、日米欧の金融政策決定会合を経て、9、20、50、200日指数移動平均線が上向きかつ、上から順に並ぶ強気の「パーフェクトオーダー」が成立しており、明確な上抜けに成功していない水平レジスタンスである2,050ドル、更には史上最高値である2,081ドル突破が視野に入る。
金価格(XAU/USD)日足チャート

資料:Trading View



-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著