ドル円の展望と取引戦略
【サマリー】
- 景気の悪化が意識され米金利は緩やかな低下トレンド辿るだろう
- 米国株の下落に連動して円高の圧力がジワリと高まっている
- 今のドル円はショート戦略を軸とした取引を意識したい
- 売買を仕掛ける具体的な水準とタイミングについて
目先の展望:下値を模索する状況が続く
米ドル安によるドル円の下落
ドル円は現在、138.00レベルが強固なレジスタンスポイントとして意識されている。テクニカルの面では21日線(MA / 137.58レベル)がレジタンスラインとなっている。
米国の株式市場では12月の連邦公開市場委員会(FOMC)を “タカ派” と捉えているが、米債市場では利回りに大きな変動は見られず、11月消費者物価指数(CPI)でインフレの鈍化が確認された後のトレンド(金利の低下トレンド)が続いている。
今後、米債市場ではインフレの鈍化だけでなく景気の悪化も意識されるだろう。よって、米金利は緩やかな低下トレンドを形成することが予想される。
米金利のチャート
チャート:Bloomberg L.P. / 5分足(12月13日~)
米株安によるドル円の下落
月初来の円相場のパフォーマンスを確認すると、円高の圧力がジワリと高まっていることがわかる。
12月に入り米国株が再び不安定な状況に陥っているタイミングで円高優勢へ転じた事実を考えるならば、今後も米株安が続く場合は、“リスク回避の円高圧力” の高まりを想定する局面へシフトしている。
米金利の低下による米ドル安と、株安による円高を想定するならば、ドル円は調整の反発を挟みながらも下値を模索する展開が続くと予想する。
円相場のパフォーマンス:月初来
為替データ:Bloomberg L.P. / 基準日:2022年11月30日(12月16日時点)
政策転換の思惑によるドル円の下落
そしてドル円の下落幅が拡大する新たな要因として注目したいのが、政府・日銀の政策転換(に対する市場の思惑)である。
共同通信は17日、岸田政権は安定的な経済成長を実現するために政府と日銀の役割を定めた共同声明を初めて改定する方針を固めたと報じた。
現在の金融緩和政策が修正されるとの思惑で、週明けのドル円は135.82レベル(IG中値レート)と、先週16日の終値136.74レベルから大幅な円高水準でスタートした。一方、日本の債券市場では国債売りが見られる。
今年3月以降の円安の土台は、日米金融政策スタンスの差にあった。しかし、現行の金融緩和政策が転換する可能性が浮上してきたことで、今後政策スタンスの差による円安の圧力は後退していくだろう。
このタイミングで米金利の低下や米株安が続く場合、ドル円は今月2日の安値133.62レベルのトライおよびブレイクが予想される。
ドル円のチャート
チャート:IGチャート / 5分足
テクニカル分析入門
ニュースを活用したトレード方法
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売買のポイント:ドル円のショート(米ドル売り/円買い)のケース
トレンドフォローに従うならば、今のドル円はショート戦略(米ドル売り/円買い)を軸としたい。136円台でショートを仕掛ける場合は相場の戻りを止めた経緯のある136.35レベル、136.60レベル、136.80レベルを意識したい。これらの水準で反落が確認される場合に、ドル円の成行き売りを狙いたい。
なお、今日の欧州タイムに短期レジスタンスラインが136.60レベルと交錯する。
ドル円のチャート
チャート:TradingView / 15分足(12月15日~)
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | -4% | -1% | -1% |
週次 | -3% | 4% | 2% |
一方、ドル円が137円台へ反発する場合は、先週16日の東京時間からレジタンスポイントとして意識されている137.40レベル、および上述した21日線が推移する137.60レベルでの指値売りを考えたい。これらレジタンスポイントでの反落が確認される場合に成行きの売りを仕掛ける手もある。
指値売りのポイントとして最も注目しておきたいのが、サポートからレジタンスへ転換している138.00レベルである。先週14日に高値138.17レベルまで上昇した経緯を考えるならば、138.10台での指値売りを仕掛けることも考えておきたい。
ドル円のチャート
チャート:TradingView / 日足(今年10月~)