南アフリカでインフレ率が公表され、中銀目標近くまで鈍化を示した。インフレが鈍化する中、南ア中銀の次の金融政策に注目。各国の金融政策に乖離が生じる中、南アフリカランド、トルコリラ、メキシコペソの見通しとは



サマリー
- 南ア消費者物価は、中銀目標4.5%へ近付く
- 一部新興国中銀は利下げに転じる中、南ア中銀の次回会合に注目
- 南アフリカランド(ZAR)、メキシコペソ(MXN)、トルコリラ(TRY)の見通し
南アインフレ、目標値に向け鈍化
南アフリカで消費者物価指数が公表され、7月の前年と比べた伸びは、+4.7%と6月の同+5.4%から大幅に鈍化し、南ア中銀目標のレンジ中央値4.5%に近付いている。中銀総裁は、消費者物価がレンジ中央値4.5%に収斂すれば、利上げ終了を示唆しており、今回の消費者物価の結果を受け、南アフリカの利上げサイクル終了の可能性が高まった。南ア中銀は21年11月から11会合連続で利上げを実施し、直近の7月会合で政策金利を据え置いた。
9月会合でも政策金利を据え置いた場合、通貨との連動性が高い高い実質金利が維持されるとの思惑から、南アランドが強含む可能性がある一方、利下げに転じた場合、実質金利が低下し、南アランド(ZAR)の下落圧力となることが見込まれる。

資料:Trading economicsよりDailyFXが作成。
インフレ鈍化を受け、ブラジル中銀等の新興国の中央銀行は利上げから利下げに政策を転換している。一部中央銀行は、インフレ抑制のための利上げから政策転換を迎えつつあるが、南アフリカランド、トルコリラ、メキシコペソの見通しとは。詳しく見てみたい。
南アフリカランド/円の見通し
南アフリカランド/円は、日足チャートで、上昇トレンドへの転換を示唆する「ダブルボトム」パターンが示現後、ZAR高JPY安が進展している。RSIは50超えに転換し、ZARの強気モメンタムに転換している。また、MACDラインがシグナルラインを上抜ける「ゴールデンクロス」が示現しており、テクニカル面では強気シグナルが点灯している。
インフレ鈍化により南ア中銀の利下げの可能性は高まっているものの、9月21日の金融政策決定会合まで一カ月弱残っていることを勘案すると、現在の南アランド高円安トレンド継続を見込む。2022年6月から2023年5月のZAR安JPY高の半値戻し7.860レベルを突破すると、南ア高圧力が強まり、フィボナッチリトレースメント61.8%水準の8.085レベルが視野に入る。
一方、リスクとしては9月20日のFOMCを控えてFRBの更なる利上げ、金融引き締めとの思惑が強まった場合、リスクオフの流れが強まり、南アランド安円高が進展する可能性がある。その場合、フィボナッチ38.2%水準7.635レベルでサポートされるかに注目。
ZARJPY日足チャート

資料:Trading View
メキシコペソ/円の見通し



メキシコペソの対円の日足チャートは、レジスタンスとして機能していた8.511レベルを上方ブレイクし、上昇圧力が強まっている。MACDラインが上抜きかつ、シグナルラインを上回っており、MXNの上昇の勢いが衰えていない。
テクニカル面で強気シグナルが点灯する中、ジャクソンホール会議にて、パウエルFRB議長が更なる金融引き締めを示唆しなかった場合、2014年11月高値8.721レベルへのメキシコペソ高円安進展を見込む。
一方、パウエルFRB議長が一段の金融引き締めの必要性を示唆した場合、投資家のリスク回避姿勢が強まり、メキシコペソ安円高の進展を見込む。その場合、8.511レベルがサポート転換しているかに注目。
MXNJPY日足チャート

資料:Trading View
トルコリラ/日本円の見通し
1TRY当たり5.00円近辺までトルコリラ安が進展した後、緩やかなトルコリラ高円安が進展している。テクニカル面では、トルコリラ高に向けたシグナルが出始めている。このような中、トルコ中銀は、8月24日に金融政策決定会合を開催する。
インフレ抑制のために大幅な利上げが実施された場合、通貨トルコリラが上昇する可能性がある一方、小幅な利上げにとどまった場合、再度トルコリラ安が転換することを見込む。
市場予想を上回る大幅な利上げが実施された場合、心理的節目である5.50レベルを超えたTRY高JPY安進展が視野に入る。一方、小幅な利上げにとどまった場合、5.00レベルへ下落しよう。
TRYJPYチャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著