米ドル円、為替介入、USD/JPY、FRB、日本銀行―トーキングポイント



パウエルFRB議長の発言に反し、金融市場の利上げ織り込みは限定的
ECBフォーラムにて日米欧英の中央銀行総裁による討論会が開催され、パウエル米FRB議長は連続利上げの可能性に言及する等、金融引き締めの継続を示唆した。しかしながら、金融市場では1回強の利上げ織り込みにとどまっている。FRBが年内2回の利上げを示唆していることとは対照的である。植田日銀総裁は当面の金融緩和を示唆する旨の発言をし、日米の金融政策格差が意識され、ドル高円安が進展した。

資料:Bloomberg、OIS市場データよりDailyFX.comが作成。
米国経済は底堅く、年内1回の利上げ織り込みの低下余地は限定的
27日に発表されたカンファレンスボード消費者信頼感が示唆しているように米国経済は底堅く推移している。パウエル議長が示唆した通り、米FRBは今後も金融引き締めスタンスを維持する必要があり、金融市場が織り込んでいる年内1回の利上げ織り込みが一段と低下する余地は限定的であろう。FRBの利上げ・高い政策金利織り込みは米ドルのサポート要因である。
米国消費者信頼感(左)と即時版賃金上昇率(右)

資料:BloombergよりDailyFX.comが作成。
日米金融政策格差はドル円をサポート
FRBの金融引き締め、日銀の金融緩和を受け、米ドル円は144.4円台まで上昇(ドル高円安)している。7月26日のFOMC、28日の日銀金融政策決定会合まで約1か月ある中、当面は日米の金融政策格差は米ドル円のサポート要因になることを見込む。もっとも、日本銀行は金融緩和維持スタンスを前回会合で示唆しているものの、足元の物価上昇、インフレ予想の改定(展望レポート)を行うことから、イールドカーブコントロール政策(YCC政策)を変更してくる可能性はあり、7月終わりの会合が近付くにつれて金融政策変更に対する思惑が米ドル円の重荷になる可能性がある。
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | -11% | -3% | -4% |
週次 | -6% | 4% | 2% |
米ドル円の見通し
MACDラインは上向きかつ、シグナルラインを上回っており、上昇の勢いは衰えていない。日米金融政策格差が意識される中、昨年9月から10月にかけての重要なレジスタンスであった144.85レベルをトライしよう。上抜けるとドル高円安トレンドが一段と強まる可能性があり、昨年10月から今年1月にかけてのドル円の動きに基づいたフィボナッチリトレースメント61.8%水準146.65円が視野に入る。
一方、最近の急ピッチの上昇を受けドル円の下落にも警戒する必要がある。筆者は「ドル円見通し:為替介入の可能性は低い?ドル高円安の可能性」の通り、日本通貨当局による実際の為替介入の可能性は低いと見ているものの、口先介入の可能性は高まっている。ドル円が下落する局面では、フィボナッチリトレースメント61.8%水準142.50円がレジスタンスからサポート転換したかに注目したい。サポート転換したことが明らかになると、ドル円の下値余地は限定的との思惑から再度ドル高円安トレンドの再開しよう。一方、142.50円を下方ブレイクすると米ドル高円安トレンドが終了した可能性が高まり、142.00、更に6月20日安値141.21円をトライする可能性が高まる。
米ドル円日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著