米国・カナダで雇用統計が発表。米ドル、カナダドルの見通しは?日銀会合以降のUSドル高円安トレンドの行方は?



サマリー
- 米国・カナダの雇用統計は、強弱入り混じる結果
- 2024年初めの金融政策織り込みは米国・カナダで異なっている
- 米ドルカナダドルは「陽の包み足(抱き線)」が示現
- 米ドル円の見通し
米国・カナダの雇用統計の結果
米国・カナダにて、金融政策の動向を占う上で重要な雇用統計が公表された。米国では、非農業部門雇用者数は18.7万人増(事前予想20万人)、インフレ率と関係の深い平均時給(前年比)は4.4%の伸び(事前予想4.2%増)であった。カナダでも、雇用者数は6千400人減(事前予想2万1千人増)、平均時給は5%増に加速した。両国の雇用統計の結果は、雇用者数の伸びは鈍化もしくは減少を示し、雇用市場が緩やかながらも軟化していることを示した一方、賃金の伸びは高止まりしていることを示し、強弱入り混じる結果であり、FRB(米連邦準備制度理事会)及びカナダ中銀の利上げ停止が近いとの見方を変えるものではなかった。金融市場では、FRB、カナダ中銀共に、年内のあと1回の利上げと据え置きで予想が分かれている。一方、2024年はじめにかけての政策金利見通しは大きく異なっている。FRBの利下げを金融市場が織り込んでいる一方、カナダ中銀の政策金利据え置きが予想されている。米国のインフレ鈍化、景気減速が利下げ織り込みの背景にあろう。

資料:BloombergよりDailyFXが作成。
しかしながら、米国景気は底堅く推移していることに加え、金融政策を決定する上で重要なインフレ率も、カナダに比べて米国は高止まりしている。景気、インフレ動向を勘案すると、カナダ中銀が政策金利を据え置く中、FRBの利下げ織り込みが一段と進展することは見込みづらい。FRBの一段の金融緩和織り込みが進展しない(利下げから据え置きに転換)ことは、米ドルのサポート要因となろう。

資料:Trading Economics
米ドル/カナダドルの見通し
日足チャートで、米ドル高カナダドル安トレンドへの転換を示唆する「陽の包み足(抱き線)」が示現して以降、カナダドル安が進展、レジスタンス1.326レベルを上方ブレイクし、米ドル高カナダドル安トレンドが鮮明になっている。更に、最近のレジスタンスであった200日指数移動平均線を上方ブレイクしており、一段とUSD高CAD安トレンド圧力が強まっている。テクニカル面で弱気シグナルが点灯し、FRBの一段の利下げ織り込み余地が限定的である中、5月26日から7月14日までのUSDCADの値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント61.8%水準1.344レベルが視野に入る(米ドル高カナダドル安)。
一方、カナダの主要輸出品目である原油価格が上昇した場合は、カナダドル高が進展しよう。カナダドル高が進展した場合、サポート転換した可能性がある1.326レベルでサポートされるかに注目。下方ブレイクすると、カナダドル安トレンドが終了した可能性が高まる。
USDCAD日足チャート

資料:Trading View
米ドル円の見通し
日銀金融政策決定会合を経て、USドル高円安が進展し、 6月30日から7月14日のドル円の値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント78.6%水準143.394をトライした。しかしながら、同水準の上方ブレイクに失敗、円高トレンドへ転換しており、143.394レベルが強固なレジスタンスであることを示唆している。更に、フィボナッチ61.8%水準142.078レベルも下方ブレイクしており、ドル安円高トレンドが鮮明になっている。テクニカル面では弱気シグナルが点灯しているものの、FRBの一段の利下げ織り込みの余地が限定的であることから、円高・円安どちらの展開も想定しておきたい。
金融市場がFRBの2024年初めの金融政策見通しを、利下げから据え置きに転換しにいく過程やフィッチ社による米国債格下げの影響が和らいだ場合、フィボナッチ78.6%水準143.394レベルを再度トライする展開を見込む。ブレイクした場合、ドル高円安圧力が一段と強まり、144.00レベル、更に上昇の勢いが衰えなかった場合、6月30日高値145.07レベルが視野に入る。
一方、日本銀行が10年国債利回りの更なる上昇を容認した場合や米国債格下げの影響が大きくなり、リスクオフの流れが強まった場合、円高が進行する展開を想定。その場合、フィボナッチ38.2%水準140.228レベルが視野に入る。
USDJPY日足チャート

資料:Trading View



新たなレポートの配信等はtwitterアカウント@DailyFXJapanで確認できます。
--- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著