※2023年5月29日10時54分更新
ドル 週間見通し: 強気
- ドル相場は過去3週間で3%上昇している
- 米債務上限合意と米非農業部門雇用者数がドルをさらに押し上げるか?
- ドル指数は重要な移動平均線の上方ブレイクが確認された



ドル相場のファンダメンタルズ分析
ドル指数は、この1週間で1%上昇した。過去3週間ではほぼ3%上昇している。15日間の上昇率としては、昨年9月中旬以来最大となった。この上昇の原動力は何か、そしてこの動きが続くだけのファンダメンタル要因はあるのかを詳しく見ていきたい。
米2年債利回りは今月14%近く上昇している。短中期的な米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が後退しているためだ。過去数十年で最も積極的な金融引き締めが実施されていた中、米シリコンバレー銀行の破綻をきっかけに景気後退の時期が早まるのではという懸念が広がり、利下げを予想する見方は急速に強まった。
その後、特にここ数週間は、米労働市場が依然としてひっ迫していることを示す米経済指標が続いている。加えて、先週はFRBが重視する米インフレ指標が発表され、軒並み上昇した。物価上昇圧力は衰えておらず、さらなる引き締めが必要となる可能性が高いことが示され、少なくとも利下げが必要という兆候は見られない。
また、忘れてはならないのは、水面下では量的引き締めが依然として実施されているということだ。FRBは保有する米国債と米不動産担保証券(MBS)を解消し続けている。市場では、7月末の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合での25ベーシスポイントの利上げ実施が完全に織り込まれている。年内の金融緩和に対する期待は急速に萎んでおり、端的に言えば、これがドル高を助長している。
それを踏まえたうえで、目先、注目すべき重要な経済イベントが2つある。1つは、米債務上限引き上げを巡る交渉だ。6月上旬までにバイデン米大統領(民主党)とマッカーシー下院議長(共和党)が合意に至らなければ、米国債のデフォルト(債務不履行)という前代未聞の危機に陥るリスクがある。
もう一つは、5月の米非農業部門雇用者数(NFP)の発表である。先述の通り、米労働市場のひっ迫は、インフレ抑制を目指すFRBにとっては引き続き、頭の痛い問題となっている。5月のNFPが米雇用市場の堅調さを再び示せば、目先の利下げ観測はますます後退することになるだろう。5月のNFPは前月比19万人増加し、失業率は前月の3.4%から3.5%にわずかに上昇すると見られている。



ドル相場のテクニカル分析
テクニカル面では、ドル指数は100日単純移動平均線(SMA)の上方ブレイクが確認されている。これにより、ドル相場のファンダメンタルズ見通しはますます強気に傾いている。主要なレジスタンスは、フィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準104.11である。このポイントを上抜けた場合、3月の高値105.88が視野に入ってくる。一方、下降に転じると、100日SMAがサポートとして機能する可能性がある。
ドル指数 日足チャート
資料:TradingView
--- DailyFX.com シニアストラテジスト ダニエル・ドゥブロスキー著
ドゥブロスキー氏に連絡するには、Twitter で @ddubrovskyFX までお願いいたします。