※2023年8月7日18時02分更新
ドル見通し:対ユーロ・英ポンド・円



先週金曜に発表された米雇用統計はまちまちの結果となり、今週9日発表の重要な米インフレ指標を前に、ドルの上値は限定的となりそうだ。
それほど悪い結果ではなかった米雇用統計の発表後、ドルは先週の上昇分をほぼ帳消しにするほど大幅に下落した。非農業部門雇用者数は予想を下回った一方で、失業率は低下し、平均時給は予想を上回った。雇用需要が減速しているのは確かだが、労働市場は今のところ、ひっ迫したままだ。
まちまちの結果となったことは、予想を下回る結果に大きく反応した最近の値動き同様、ドルに大きな影響を与えたが、明るい結果がもたらす好影響は長続きしないようだ。米国エコノミックサプライズ指数は2021年初頭以来の高水準であるにもかかわらず、ドル指数は年初来安値の水準付近で推移している。詳しくは7月16日付記事(英語のみ)をご参照ください。
世界のインフレ率と米国エコノミックサプライズ指数
資料:ブルームバーグ
市場が注目しているのは9日に発表される米消費者物価指数(CPI)だ。7月のCPIコア指数は前年同月比4.7%上昇と、前月(同4.8%上昇)から伸びが鈍化すると予想されている。今後数週間は、米連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)が9月の金融政策決定会合で追加利上げに踏み切るかどうかを見極めるうえで重要な期間となる。上図が示すように、米国は、インフレ率は他国に比べて減速ピッチが速いが、経済成長に対する期待は根強い。
ドル指数週足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
ドル指数:宵の明星が示現、前途多難か
テクニカルチャートでドル指数は、先週末にかけて、弱気への反転の日足ローソク足チャートである宵の明星が示現した。指数は、200日移動平均線よりわずかに下に位置する89日移動平均線というレジスタンス付近から後退している。
ドル指数 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
週足チャートでは、ここ数カ月の上昇にもかかわらず、14週RSI(相対力指数)は50-55を超えていない。50-55は通常、自律反発と新トレンドの始まりを区別する閾値である。値動きはまだ方向性が定まっておらず、指数が上昇を拡大する可能性もある。上昇局面では3月の高値106が鍵となり、これを上方ブレイクすると、本格的な上昇基調に転じる可能性が高まる。
ユーロ/ドル 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
ユーロ/ドル:上昇トレンドチャネル内にとどまる
2022年後半以降、高値圏での高値・安値の切り上げパターンが続いていることから、ユーロ/ドルの広範なバイアスは引き続き上向きである。直近では、価格は3月からの上昇チャネル内で推移している。しかし、目先はもう少し上値の重い展開となる可能性がある。詳しくは、8月2日付記事「ユーロ相場見通し:米国債格下げで小幅高、でも上昇は続くか?」をご参照ください。
英ポンド/ドル 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
英ポンド/ドル:強いサポートからの反発を試みる
前回の記事でその可能性を指摘していたが、英ポンド/ドルは、6月末の安値1.2600、89日移動平均線、日足チャート上の一目均衡表の雲下端付近のかなり強いサポートを上回る水準を維持している。詳しくは、8月4日付記事「英ポンド見通し:反発が視野に、英中銀の利上げを受けて」をご参照ください。一般的に、売られ過ぎの状況は小反発が起こる可能性を示唆しており、価格は1.2800-1.2900付近の堅いレジスタンスエリアへ向かって上昇するかもしれない。
ドル/円 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
ドル/円:反発は力尽きる?
ドル/円が、200期間移動平均線と7月21日の高値142.00を含む、141.50-142.00の重要なレジスタンスを上回る水準を決定的に維持できなかったことは、日銀会合後の反発が力尽きつつあることを示している。それでも、140.25-141.25の重要なサポートを割り込まない限り、当面の上昇圧力が弱まったという確証は得られないだろう。
--- DailyFX.com ストラテジスト マニッシュ・ジャラディ著
ジャラディ氏に連絡するには、Twitterで @JaradiManish までお願いいたします。