米ドル、 DXY、FRB、インフレ期待、テクニカル分析 - アナリスト精選
- 2022年第2四半期の米ドルは、2016年第4四半期以来最高のパフォーマンス
- FRB政策のインフレギャップは、米ドルにまだ上昇余地があることを示唆
- 米ドル指数は、上値レジスタンスを上回り重要なブレイクアウトを確認



一貫して上昇を続けてきた米ドルに、上昇の余地はあるか?
米ドルはこのところ、主要な通貨に対して上昇を続けている。ユーロの比重が大きい米ドル指数(DXY)は今年に入り、最高値を更新し続けている。実際、第2四半期はDXYが6.5%上昇し、2016年第4四半期以来の上昇率を記録した。今後、数日から数週間、米ドルに上昇余地はあるのだろうか?おそらくあるだろう。
このところ、欧州の経済成長に対して悲観的な見方が増えていることと、コモディティ相場の好転が重なり、米ドルの上昇を後押ししている。ここ数週間、市場は、ロシアのウクライナ侵攻による緊張が継続し、ユーロ圏の購買担当者景況指数(PMI)が悪化する中、欧州中央銀行(ECB)が年内にどの程度の引き締めを実施できるかを見極めようとしている。これを受け、ドイツの短期債利回りは低下した。
先進国の中央銀行がほぼ一斉に金融引き締めに動く中、世界の景気後退懸念の高まりが、コモディティ価格やコモディティ市場のセンチメントに連動する通貨を押し下げた経緯もある。これらの通貨には豪ドル、ニュージーランドドル、カナダドルが含まれる。カナダドルは、第3四半期にWTI原油価格に下振れリスクが発生した原油市場の直近のトレンド転換により、特に打撃を受けている。
米ドルはどうだろうか。1年先を予想する期待インフレ率と米連邦準備制度理事会(FRB)によるインフレ見通しを比較し、そのギャップを利用して今後の米ドルの動きを読むことができる。下記の図を参照されたい。1年後の米国のブレイクイーブン・インフレ率は3.75%となっている一方、フォワードカーブはFRBの予想が3.30%であることを示唆している。つまり、インフレ率のギャップを縮めるまでにFRBにはまだ45bps残されていることになる。
3月以降、ギャップは縮小し、米ドル指数(DXY)は上昇している。現在のギャップは今年に入ってから最小となっており、FRBがインフレ期待にほぼ追いついたことは注目に値する。FRBがギャップを埋めてしまえば、その後は、標準的な物価目標である2%までインフレ率を引き下げるために利下げ実施の必要があるかどうかに焦点が移るだろう。



FRBのインフレ予想はまもなく1年先の期待インフレ率に一致する

資料:ブルームバーグ、チャート作成は弊社ダニエル・ドゥブロスキー
米ドル指数のテクニカル分析
米ドル指数(DXY)は最近、6月高値の105.788を上抜けしたことが確認された。これにより、フィボナッチ61.7%エクステンション107.45の水準が意識され、上昇幅を拡大する可能性がある。最近、ドル高は急激に進行しており、下記チャートの赤点曲線がそれを示している。この曲線を割り込むと、50日単純移動平均線が視野に入り、下降を示唆する可能性がある。一方で、さらに上昇トレンドが継続するようであれば、109.13と111.26にそれぞれ78.6%と100%のエクステンションがあり、これらが上値レジスタンスとして意識されるだろう。
米ドル/円 日足チャート

資料:TradingView
--- DailyFX.com ストラテジスト ダニエル・ドゥブロスキー著
ドゥブロスキー氏に連絡するには、下のコメント欄を使用するか、Twitter で @ddubrovskyFX までお願いいたします。