米ドル ファンダメンタルズ分析見通し:中立



先週の米ドル相場は軟化した。米ドル指数(DXY)は2002年6月以来の高水準まで上昇したが、その勢いは弱まり、週後半は低下した。しかし、昨年来の「強いドル」相場は依然として続いている。米ドルを動かすファンダメンタルズ要因は、米連邦準備制度理事会(FRB)の比較的積極的なタカ派姿勢と回復力のある米国経済だが、双方とも健全さを維持している。米ドル指数は6つの主要通貨に対する米ドルの価値を示した指数だが、その中でもユーロは最も比重の高い通貨である。実際、ユーロは米ドル指数の低下を主導している。
先週8日に欧州中央銀行(ECB)が政策金利を75ベーシスポイント(bp)引き上げたことで、ユーロは上昇した。ECBがこれほど大幅な利上げを実施したのは、ECBがユーロ圏の金融政策運営を始めた1999年以来である。クリスティーヌ・ラガルドECB総裁は、さらなる利上げを実施すると述べた。欧州債の利回りは急上昇し、米国債利回りとのスプレッド(利回りの差)は縮小した。ECBは米ドル高に追いつこうと、ユーロの支えに躍起になっているように見えるが、欧州は今冬のエネルギー危機をはじめ、米国に比べより多くのリスクにさらされている。このような状況下、FRBには利上げの余地があることを考慮すると、ユーロが米ドルに対していつまで上昇できるかについては疑問が残る。
来週に会合を控えた米連邦公開市場委員会(FOMC)は10日、メンバーが金融政策についての発言を控えるブラックアウト期間に入った。市場は、9月22日に75bpの引き上げを実施する可能性は85%と見ている。ジェローム・パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は8日、FRBは物価抑制に「強くコミットしている」と表明し、インフレが長期化すればするほど、インフレの抑制はより難しくなると警告した。次回22日の会合以降の利上げペースについての市場予想は、方向性がまだ定まっていないが、さらなる利上げはあるものの、その利上げ幅は縮小する可能性がある。
今後1週間の米ドル相場にとっての主なリスクは、米国の8月の消費者物価指数(CPI)である。米国時間13日に発表される8月の米CPIは前年同月比8.1%上昇と、前月(同8.5%上昇)から低下すると予想されている。しかし、変動の大きい食品とエネルギー価格を除いたコア指数は、同5.9%(7月)から6.0%に上昇すると予想されている。米ドル相場にとって最も下げ要因となるのは、双方の結果が予想を下回った場合である。これにより、利上げ幅予想が50bpに傾く可能性があるためである。 その場合、米ドルの影響を受けやすい短期の米国債利回りに低下圧力がかかる可能性が高い。




--- DailyFX.com アナリスト トーマス・ウェストウォーター著
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