米国株、S&P500、FOMC、FRB、利下げ、NASDAQ、NYダウ―トーキングポイント



FRBは利上げスキップ、今後は「ライブ」
米連邦準備理事会(FRB)は、米連邦公開市場委員会(FOMC)で1年余り続いた利上げを見送った。経済見通しでは、あと2回の利上げを示唆したものの、パウエルFRB議長は7月会合以降に利上げを実施するかは、経済状況次第で変わる「ライブ」であることを強調した。
FOMC前は、金融市場では残り1回の利上げを織り込んでいたため、あと2回の利上げが示唆されたことで一時米国金利は上昇、米国株は下落した。しかしながら、7月以降の利上げが決定したものではないことをパウエル議長が協調したことを受け、米国株は買い戻される展開になった。米国株は、ナスダック総合指数は上昇、S&P500は小幅高、NYダウは下落となった。まちまちの動きであるものの、FRBが極端にタカ派(金融引き締め的)スタンスを示さなかったこと、不確実性の高かったFOMCを通過した安心感がS&P500やナスダック総合指数の上昇に寄与していよう。
金融市場では、7月ないしは9月に1回の利上げを実施後、年内据え置き~1回の利下げ織り込みとなっている。FRBはあと2回の利上げを示唆しているものの、今後の利上げ実施がデータ次第であることを勘案すると、概ねFOMCの結果を反映した織り込みになっていると考える。
次回FOMC以降はデータ次第であるものの、FRBの利上げ終了が近付いていよう。今後は今までの「利上げを織り込む」局面から、FRBがいつ利下げを実施するのか、「利下げを織り込む」局面になるかもしれない。
1989年以降、FRBは6回の利下げ局面を経験してきた。パウエル議長は「利下げは2年ほど先」と言及しているものの、今までの利上げの影響が遅行して現れるにつれ、データ次第で来年利下げに転じる可能性は十分にあろう。過去利下げに転じる180営業日前から利下げを実施するまでの米国株のパフォーマンスは概ね良好であった。

資料:BloombergよりDailyFX.comが作成。
2000年のITバブル崩壊時を除き、米国株(S&P500、ナスダックス総合指数、NYダウ)はプラスのパフォーマンスを記録している。金融市場の先取りする性質から、実際に利下げを実施する前からFRBの金融緩和スタンスへの転換、利下げを織り込み、米国株が上昇したと思われる。FRBの利上げ終了、更にはその先の利下げへの転換が近付く中、今回も同様にFRBの金融引き締めスタンスからの転換を先取りする形で米国株(S&P500、ナスダック、NYダウ)が、今後一段と上昇する可能性がある。
利下げ開始までの米国株パフォーマンス

資料:BloombergよりDailyFX.comが作成。利下げ開始180営業日前から利下げ開始日までのパフォーマンス
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 4% | -8% | -1% |
週次 | 33% | -18% | 5% |
S&P500のテクニカル分析 – 一段高が視野
アセンディングトライアングルパターンの上限(4195.44ドル)、そして昨年8月高値(4325.88ドル)を上方ブレイクしており、S&P500の上昇圧力が強まっている。9、20、75、200日指数移動平均線は上向きかつ、上から順に並ぶ「パーフェクトオーダー」が成立しており、上昇トレンドの継続を示唆している。
FRBの金融政策を巡る不透明感が晴れつつある中、S&P500の一段高を見込む。昨年4月高値4,520ドル更新が視野に入る。更に上昇の勢いが衰えなかった場合、アセンディングトライアングルパターンのレンジから4,600ドルをトライしよう。
一方、調整する局面では9日指数移動平均線でサポートされるかに注目。サポートされた場合、相場の地合いが強いことを投資家に印象付けよう。下方ブレイクした場合、上昇トレンドが終了した可能性がある。その場合、アセンディングトライアングルパターンの上限4195.44ドルへの下落が視野に入る。
S&P500日足チャート




資料:Trading View
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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著