エルカン氏が中銀総裁に就任して以降利上げが実施されているトルコで、貿易収支、GDPが公表された。4日には消費者物価指数が公表。このような中、トルコリラの対円での見通しとは



サマリー
- トルコ景気の先行き
- トルコ中銀の動向が引き続きTRYの鍵
- トルコリラ円の今後の見通し
トルコ景気の先行き
インフレ抑制のための利上げ、金融引き締めへ舵を切ったトルコにて、30日に貿易収支、31日にGDPが公表された。貿易赤字は前月よりも赤字幅が拡大した。第2四半期実質GDPは前年同期と比べて3.8%成長となり、第1四半期と比べて鈍化したものの、事前の市場予想を上回る成長を示した。
個人消費が堅調だった一方、輸出は鈍化した。ただし、個人消費は5月の大統領選挙前の個人・家計向けの景気刺激策の効果も大きく、効果は衰えていくことが見込まれる。また、高インフレに対応するためにトルコ中央銀行は利上げを実施しており、今後個人消費の重荷になっていく可能性があり、景気は減速していくと予想する。

資料:Trading Economics
最重要なのは中央銀行、インフレ
GDP統計は底堅い景気回復を示したものの、通貨トルコリラの鍵を握るのは今後もトルコ中央銀行の金融政策であろう。トルコでは、高インフレにもかかわらず、低金利政策が取られた結果、トルコ中央銀行の信認が低下、通貨TRYは下落していた。
しかしながら、6月にエルカン氏が新トルコ中銀総裁に就任して以降、風向きが変わりつつある。エルカン総裁体制以降、トルコ中銀はインフレ抑制のために利上げを実施している。特に7月に副総裁もニューヨーク連銀での勤務経験のあるエコノミストらが就任して以降、大幅な利上げに踏み切っている。
今後もインフレ抑制のために高い政策金利政策を維持した場合、トルコ中央銀行の信用が回復、通貨トルコリラが今までの大幅下落を取り戻す可能性がある。
トルコ中銀の金融政策動向を占う上でインフレ動向が重要である。消費者物価指数は、6月に前年と比べ48%近い伸びとなったが、9月4日発表される7月分も、引き続き高いインフレの伸びを示す可能性が高い。
しばらくはトルコの高いインフレの伸びは継続することが見込まれるが、利上げ、通貨トルコリラが回復するにつれて、徐々にインフレが鈍化していく可能性がある。逆に高インフレが継続する場合は、更なる利上げ、金融引き締めが視野に入ろう。21日のトルコ金融政策会合でトルコ中央銀行が金融引き締めを継続できるかに注目したい。もっとも目先は米国雇用統計がトルコリラ相場にも大きな影響をもたらそう。FRBの利上げ終了が近いとの見方が強まった場合、トルコリラ高の進展を見込む。詳しく見てみたい。

資料:Trading Economics
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トルコリラ/日本円の見通し
トルコリラ円は、8月24日会合でのトルコ中銀による大幅利上げを受け、心理的節目である5.50円を上方ブレイクしたものの、再度5.4台に下落している。しかしながら、RSIは50を上回っており、通貨トルコリラの強気モメンタムが継続している。
テクニカル面では、TRYに対してやや強気な状況が続いている。このような中、9月1日の米国雇用統計でFRBの利上げ終了との見方が強まった場合、投資家のリスクセンチメントが改善し、トルコリラ円が上昇(TRY高JPY安)が進展することを見込む。その場合、トルコリラ円は5.5台を回復する可能性がある。
一方、米国雇用統計にてFRBの追加利上げ観測が高まった場合、投資家のリスク回避姿勢の強まりからトルコリラ円は下落(TRY安JPY高)する可能性がある。トルコリラ円は、8月24日のトルコ中銀会合前の水準5.247レベルでサポートされるかに注目。サポートされた場合、トルコ中銀の金融引き締めへの転換が進んでいることを金融市場が好感しており、トルコリラの地合いが強いことを投資家に印象付けることを見込む。
TRYJPY日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著