トルコでインフレ率が発表。トルコ中銀の金融政策は不確実性が高いものの、中央銀行のスタンスに変化の兆しが。通貨トルコリラの見通しは(対ドル、対円)?



サマリー
- トルコインフレ率は急加速
- トルコ中銀は副総裁を後退、利上げに向けた体制作りの可能性
- テクニカル面ではトルコリラの反転の兆しも、引き続きトルコ中銀がTRYの鍵を握る
インフレ加速
トルコでインフレ率が公表された。前年と比べた伸びは、48%に急加速した(前月は38%)。エルカントルコ中央銀行総裁は、27日の記者会見で2023年末時点でインフレが58%に加速するとの見通しを示していたことと整合的である。

資料:Trading Economics
エルカン総裁は、記者会見にて、「段階的な利上げと量的引き締め、選択的な与信の引き締めによって物価の安定を達成する」と述べており、高インフレに対応すべく、金融引き締めを一段と強めていくことを示唆した。
また、トルコ政府は28日、中央銀行の副総裁3人の交代を発表した。新たにNY連銀勤務経験のあるエコノミストらが副総裁に就任した。
エルカン総裁は、従来のトルコ中銀と異なり、高インフレ抑制のための金融引き締め、利上げが必要との意向を示している。今回の副総裁の交代も、インフレ抑制のための伝統的な金融政策、利上げを今後も行っていくための体制を整える一環の可能性がある。
トルコでは、エルドラン大統領の意向を受け、高インフレにも関わらず、低金利政策を実施し、トルコ中央銀行の信用が失墜、通貨トルコリラが下落してきた。その結果、通貨トルコリラを支えるために、トルコ中銀は為替介入を実施してきた。しかしながら、足元外貨準備が増加傾向にある。このことは、トルコ中銀が高インフレに加え、通貨TRY下落に対応するために、為替介入ではなく、利上げ、金融引き締めで対処していくことを示唆している可能性がある。
一方で、エルカン総裁が6月に中央銀行総裁に就任して以降、金融政策決定会合にて利上げが実施しているものの、利上げ幅は事前の市場予想を下回り、インフレ抑制のための積極的な利上げ、金融引き締めを実施するかは不透明である。今後も通貨トルコリラの動向は中央銀行が鍵を握ろう。

資料:BloombergよりDailyFXが作成。



米ドル/トルコリラの見通し
エルカントルコ中銀総裁が就任して以降もトルコリラ安が進展している。しかしながら、米ドル高トルコリラ安の勢いが衰えてきていることを示唆する弱気の乖離(ダイバージェンス)がRSI及びMACDで示現している。また、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ、金融引き締め終了が近いことは、トルコリラを含む新興国通貨にとってサポート材料である。
しかしながら、トルコ中銀の一段の利上げ、金融引き締めスタンスが明確にならない限りは、下値(USD安TRY高)の余地は限定的であろう。心理的節目である26.0レベルを超えてTRY高が進展する可能性は低いと見込む。
一方、トルコ中銀が大幅な金融引き締めに転じた場合、6月金融政策決定会合前の水準である1米ドル当たり23.4975レベルを超えてトルコリラ高が進展する可能性が高まる。
USDTRY日足チャート

資料:Trading View
トルコリラ/日本円の見通し
USDTRY同様、テクニカル面では、トルコリラ安トレンドからの反転の下地が整いつつある。日足チャートで、MACDラインは上向きかつ、シグナルラインを上回っており、TRY高トレンドに転換しつつあることを示唆している。また、MACDで、TRY高JPY安トレンドへの転換を示唆する強気の乖離(ダイバージェンス)が示現しており、トルコリラ安円高の勢いが衰えていることを示している。
トルコ中銀がインフレ抑制のために、更なる大幅利上げを実施した場合、トルコ中銀の信用回復を通じて、6月金融政策決定会合前の水準である1TRY当たり6.026レベルを超えてトルコリラ高が進展する可能性が高まる。
しかしながら、トルコ中銀の金融引き締めスタンスが明確にならない限りは、TRY高の進展余地は限定的であり、心理的節目である5.50レベルを超えてTRY高が進展する可能性は低いと見込む。
TRYJPYチャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著