米債市場は経済指標にらみの展開に
【サマリー】
31日の米債市場では、10年債をはじめとした各年限の利回りが上昇した。この動きに連動し、外為市場では米ドル高優勢の展開となった。
米ドル相場のパフォーマンス:5月31日
31日の米国株式市場では主要指数が下落したが、上のパフォーマンスチャートが示すとおりドル円(USDJPY)の上昇幅は拡大し、現在は128円台の攻防へシフトしている。昨日の動きは、ドル円のトレンド決定要因が米国株ではなく米国債利回りの動き(日米利回り格差の動向)にあることを示唆している。
ドル円と日米利回り格差のチャート
日足(年初来)
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | -16% | -3% | -5% |
週次 | 4% | 7% | 6% |
・インフレのリスク、景気後退のリスクそしてアメリカの経済指標
欧州の5月インフレ率(消費者物価指数)は前年同月比で8.1%と、4月改定値の7.4%からさらに加速し、統計でさかのぼれる1997年以降で最高を更新した。長引くロシアーウクライナ紛争により資源の供給問題がインフレの高止まり要因となる可能性があることを考えるならば、欧州のみならず世界的にインフレリスクが意識される状況が続く可能性がある。昨日の米債市場ではこの点が意識され、利回りが上昇したとの指摘がある。だが、月末というタイミングを考えるならば、景気後退のリスクを意識した米債買いの調整により利回りが上昇した可能性もある。よって、今日以降の米国債利回りの動きで、どちらのリスクが意識されているのか?を確認する必要があろう。
今日以降、再び米国債利回りが低下基調へ転じるならば、それは景気後退のリスクに対する市場参加者の懸念の強さを示すことになろう。このケースでの外為市場では、米ドル売り優勢の展開を想定しておきたい。
一方、インフレリスクの方が強く意識されるならば、短期的に米国債利回りの低下圧力が後退すると予想する。
しかし、利回りが上昇基調へ転じるためには、アメリカ経済の強さを示す材料が必要である。この点で重要となるのが経済指標である。今日は5月米ISM製造業景気指数が発表される。アメリカ経済の堅調さを示す内容となれば、米国債利回りの反発基調が維持される展開を想定しておきたい。逆に予想を下回る内容となれば、利回りの低下を想定しておきたい。米ドル相場は利回りの動きに左右される状況が続くだろう。
また、米連邦公開市場委員会(FOMC)のたたき台となる地区連銀経済報告(ベージュブック)の内容も米国債利回りと米ドル相場の変動要因となる可能性がある。
ISM製造業景気指数の推移
出所:米供給管理協会(ISM)