米国株価指数 - トーキングポイント
- 先週金曜のジャクソンホールでのパウエル議長の講演を受け、米国株は弱含みで推移
- FRBは間もなく金融政策方針を転換するとの見方から、株価は6月安値から上昇したが、パウエル議長の発言は、FRBの優先課題はインフレ対策であることを明確にした
- このため、市場参加者は雇用やインフレの指標から景気減速の兆候を探るため、経済指標への関心を再び高めていると見られ、米国時間2日に発表される8月の非農業部門雇用者数に大きな注目が集まっている
- 本記事で提示される分析は、プライスアクション(値動き)とチャートパターンに基づいています。プライスアクションやチャートパターンについてもっと知りたい方は、DailyFX 学習コンテンツをご覧ください



ジャクソンホールでのジェローム・パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演後、米国株式相場は揺れ動いた。先週金曜以前から、FRBの政策方針転換を期待する市場参加者がいる一方で、積極的なタカ派姿勢でのインフレ対策継続を予想する見方もあり、FRBの舵取りで見方が交錯していたのは明らかだったが、米中央銀行のトップは、インフレ退治を優先課題とすることを明確に示した。筆者は数週間前の株式見通しでこの件について説明し、FRBがここで的を外すわけにはいかないと思われると強調した。
インフレは大きな問題を引き起こす可能性があり、歴史的に見ても、すでにかなり高い水準にある。この水準でインフレが推移していたのは、直近ではスタグフレーションが先進国を冒した70年代後半である。当時、FRBは利上げを継続したが、インフレ率は上昇するばかりだった。問題の根源は、当時FOMC議長であったアーサー・バーンズ氏が、過剰な利上げによる経済成長への打撃というリスクを取らなかったことにある。そのため、問題はさらに増大していった。この状態はインフレファイターとして知られる当時のFRB議長、故ポール・ボルカー氏が舵を取るまで続いた。ボルカー氏は、インフレを抑制するためには、FRBは銀行システムから過剰な準備金を排出する必要があり、そのための最善の方法は、金利上昇によって金融資産にインセンティブを与える(それによって資産に機会費用を与える)ことだと考えていた。
しかし、そのためには、ボルカー氏は政策金利をインフレ率よりもさらに高く引き上げる必要があった。1980 年、米消費者物価指数(CPI)は 13.5%だった。しかし、フェデラルファンド(FF)金利 はなんと 20%だったのだ。2年以内にインフレ率は下がり、1983年にはCPIは3%を下回る水準に戻った。
問題は、現在の米国の債務は対GDP(国内総生産)比で137.5%にまで膨れていることだ。ボルカー氏がFRB議長だった当時は40%以下だった。要するに、米国は当時よりはるかに多くの負債を抱えており、このような巨額の負債に対する債務返済を考えると、ボルカー氏のような戦略は当時より実現の可能性が低くなっているように思える。
FRBは本当にインフレ率を下げたいのである。なぜなら、その影響は大きく、対処が簡単ではない可能性があるからだ。インフレを許容できる水準まで引き下げるためには、どの程度の利上げが必要なのか、FRBもまだ探っている状態なため、引き続き株価の下落圧力になるかもしれない。
2日は米雇用統計で注目される非農業部門雇用者数(NFP)の発表が控えており、緊張が高まっている。発表数値次第では、どちらかの側の読みが外れ、パフォーマンスが悪化する可能性がある。これはほとんどのNFP発表に対する通常の反応かもしれないが、市場のセンチメントが全般的に悪化した状態が続いている現状においては特に、少しでもポジティブな兆候があれば、短期的に反発する可能性がある。問題はどの程度、弱気を継続するか、つまり、反発局面となった場合、この上昇を利用して、より長期的な弱気ポジションに足を踏み入れるかどうかである。そのため、2日のNFPの発表前後に米株価指数がショートスクイーズによって反発することを想定し、筆者はレジスタンスを通常より少し広めに設定している。
S&P 500
S&P 500種株価指数は、200日移動平均線とちょうど重なった8月中旬の高値から10%近く下落した。しかし、6月の安値を試すまでには、まだ余裕があり、その過程においてサポートポイントとなるのが、2022年の安値から構成されるフィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準3,915である。この水準は、6月から7月にかけてレジスタンスからサポートに転じた水準でもあり、これを下回ると、さらなる下降ブレイクの可能性が出てくるだろう。
S&P 500日足チャート

資料:Tradingview
S&P 500短期的な水準
3,915の下には、6月と7月のスイングローから形成されるトレンドラインがあり、現在、3,883付近に位置している。その下には、スイングロー形成時の最安値3,820があり、さらにその下には7月の安値3,723が控えている。上値では、8月29日の安値3,964が抵抗線となる可能性がある。もし、この水準を突破できれば、4,000から4,016のエリアが再び視野に入ってくる。
S&P 500 2時間足チャート

資料:Tradingview
ナスダック 100
ナスダック100指数はこれまで大きく下げており、米国時間1日にはまた新たなトレンドラインを割り込んだ。このトレンドラインは今や上値抵抗線となり、12,262付近の馴染みのある水準に達すると予想される。同ラインを上抜ければ、12,474近辺にもレジスタンスとなる可能性があるエリアがあり、さらにその上には、今週の高値である12,652も位置している。
下値サポートは12,074付近にあるが、これは一時的に付けた水準なため、12,000付近まで乱高下する可能性がある。その下には、11,860があり、そのさらに下には、長期的なフィボナッチの水準である11,698が控えている。
ナスダック100 4時間足チャート

資料:Tradingview
主要な支持線近辺で推移するNYダウ
ダウ工業株30種平均は上昇ウェッジを形成しながら急回復したが、上昇基調はパウエル議長の講演前からすでに崩れ始めていた。
ジャクソンホール会合当日は、陰の包み足(抱き線)パターンが示現し、その後もその状態が続いている。現時点でダウ平均は、31,337付近のフィボナッチのサポート水準が重なる合流地点を試す展開となっている。合流地点には、回復局面で付けた高値を始点としたリトレースメント61.8%、2022年安値から形成されるリトレースメント23.6%の水準が位置する。このゾーンを下抜けると、フィボナッチ・リトレースメント78.6%の水準30,726まで下落する可能性があり、その後は心理的水準30,000が視野に入ってくる。一方、レジスタンスとしては、回復局面での高値から形成されるフィボナッチ50%の水準が依然として重要である。この水準は29日にはサポートとして指数を維持し、その後31日にレジスタンスに転じた。その上には、32,400付近に別のレジスタンス合流ゾーンが存在する。
NYダウ 日足チャート

資料:Tradingview
--- DailyFX.com シニアストラテジスト、ジェームズ・スタンレー著
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