S&P 500の分析、ウクライナ戦争、経済見通し、CPIデータに関する要点
- EU(欧州連合)はロシア産原油の段階的な禁輸により、域内の経済成長に悪影響を及ぼす可能性がある
- OECDと世界銀行によるレポートは、経済見通しを明らかにするだろう
- 5月中旬から下旬にかけてのS&P 500の反発は、投資家に誤った期待を与えている可能性がある
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ウクライナ戦争 最新情報 S&P500などの株式やコモディティに連動した通貨への打撃も
英国国防長官は最近、ウクライナに長距離ミサイルを提供し、その使用方法について現地軍を訓練すると発表しました。これは、ロシアが紛争をエスカレートさせると脅しているにもかかわらず決定されました。また、ロシア軍がミサイルシステムの保管施設を攻撃すると、ウラジーミル・プーチン大統領が警告しています。
米国が最近、7億米ドルの軍事支援の一部としてウクライナに提供した兵器システムは、この軍用装備品(MLRS 多連装ロケットシステム)を変形させたものです。ただし、ジョー・バイデン大統領は、ウクライナに長距離ミサイルは提供しないことを明らかにしています。
欧州とその同盟国は、経済的な圧力も強めています。EU各国首脳は最近、ロシア産原油輸入の大部分である、海上輸送によるルートを禁止することに合意しました。パイプラインの全面禁止はエネルギー価格を大幅に引き上げると、ハンガリーが他の内陸国とともに主張したため交渉は難航しましたが、妥協案が成立しました。
ハンガリーなどの内陸国を除いて、ロシア産原油の90%が年末までに禁輸となります。ただし、短期的には政治的に有利であることが、長期的には経済的に(あるいは地政学的にも)コストがかかることが判明すれば、欧州は墓穴を掘る可能性があります。
さらに、欧州首脳はロシア最大の銀行であるズベルバンクをSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除することに合意しました。SWIFT は、銀行間の国際金融取引を処理するための重要なネットワークシステムです。これらの制裁措置は、ロシアがドンバス地域(ルハーンシクとドネツクを含む)で攻撃を続けている中で発表されました。この事態は金融マーケットにどのような影響を与えるのでしょうか。
トレード戦略とリスク管理
グローバルマクロ
推薦者: DailyFX
ウクライナに対するロシアの軍事的な行為がエスカレートすれば、欧米は制裁措置を追加し、侵攻の経済的コストを高める可能性があります。しかし、制裁措置による供給減少のショックが欧州に跳ね返り、インフレ傾向が強まれば、地域経済の原動力が損なわれる可能性もあるでしょう。
その結果、中央銀行は激しい物価上昇に対抗するために、利上げの姿勢や政策を強める可能性があります。しかし、経済のファンダメンタルズが悪化し、信用状況が厳しくなれば、投資家の期待度が下がるかもしれません。そうなると、リスクオンで買われる資産(株式やコモディティに連動した通貨など)が打撃を受ける可能性が高いと言えます。
S&P 500 週足チャート

S&P 500の週足チャート TradingViewで作成
S&P 500指数を週足で見ると、設定来最高値の4,818.62から、現在は4,100をわずかに上回る程度にまで急落していることがわかります。5月中旬から後半にかけて反発したとはいえ、本格的な回復傾向を示唆しているとは言えないでしょう。マクロ的なファンダメンタルズの状況を考慮すると、長期的な下落の中での短期的な上昇であるとも捉えられます。
重要なレポートは悲観的なムードを生むのか 世界銀行とOECDの経済見通しに注目
今週発表される2つの重要なレポートも、マーケットを冷え込ませる可能性があります。火曜日には世界銀行が「世界経済見通し」を発表する予定ですが、このレポートには悲観的な内容が含まれる可能性が高いでしょう。水曜日には、OECDが年2回発表する「経済見通し」が出される予定です。
どちらのレポートも、ウクライナ戦争などのマクロ的なファンダメンタルズの主要リスクと、新型コロナウイルス感染症に関連するサプライチェーンのボトルネックの混乱について言及されているはずです。持続的な需要と供給の遅れによる商品価格の上昇がインフレの火種となり、中央銀行に利上げを促すことも、ほぼ確実に最大のリスクとして取り上げられるでしょう。



信用状況の悪化は、金融の安定性に対する最大の脅威となるはずです。投資家は長い間、非常に緩和された信用制度を享受してきたため、リスクが高い複雑なデリバティブ(金融派生商品)の急増に拍車をかけました。金利が上昇すれば、デリバティブの健全性が試されることになり、それにともなう不安定な状況は株式にも波及するため、S&P 500を押し下げる可能性が高いと言えます。
主要インフレ率データ 米国と中国のCPIデータがS&P500などの株式に影響を及ぼす恐れも
金曜日、中国は前年同月比の5月CPIとPPI(生産者物価指数)を発表します。エコノミストはそれぞれ、2.2%と6.5% と予想しています。米国も同様の統計を発表する予定で、CPIは前年同月比8.2%上昇、前月比0.7%上昇と予想されています。これらのデータは、マーケットへどのように影響するのでしょうか。
インフレは政策当局の最重要の課題と言えるため、数値の上昇はFRB(米連邦準備制度理事会)とPBOC(中国人民銀行)のタカ派的な姿勢を後押しすることになるでしょう。金利先物については、投資家がすでにFRBによる0.5%の追加利上げを予想しており、今週のインフレ率のレポートが影響を与える見込みは低いと言えます。しかし、CPIが予想外に上振れすると、今後数ヶ月で景気刺激策が急に打ち切られるとの見通しから、投資家がパニックにおちいる可能性もあります。その場合、株式にも影響が波及するでしょう。