8月の米国株は、米国金融政策を巡る不透明感が重荷となったが、S&P500指数、NASDAQ100指数の今後の見通しとは



サマリー
- 8月の米国株ふりかえり
- FRBの利上げ終了近付く中、米国経済指標、米国金利の動向に注目
- S&P500指数、NASDAQ100指数の見通し
8月の米国株振り返り
海外市場参加者が休暇シーズンに入るなか、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策を巡る不確実性が重荷となり、米国株は下落した(8月30日終値時点)。特に、パウエルFRB議長の講演がある24-26日開催のジャクソンホール会議に向けて米国株主要指数(ナスダック100指数、S&P500指数、ナスダック総合指数)は下落した。
しかしながら、パウエルFRB議長の講演内容に大きなサプライズがなかったことや、月末にかけて米国雇用市場の軟化を示すデータが相次ぎ、FRBの利上げ終了が近付いたとの見方から米国金利が低下した結果、米国株は下落幅を縮小した。

資料:Trading EconomicsよりDailyFXが作成。2023年7月末を100として指数化。8月30日終値時点。
主要ハイテク株の動向
主要ハイテク株はジャクソンホール会議に向けて下落基調であったものの、会議後、米国金利の低下を受けて上昇基調に転じた。8月月間では、好決算を発表したエヌビディア、グーグル(アルファベット)、アマゾンが上昇した一方、ネットフリックス、アップル、フェイスブック(メタ)が下落した。特に、フェイスブックやアップルの下落が目立った。
エヌビディアは、中国の景気減速、主要中央銀行の利上げ等を受け、半導体設備投資にブレーキがかかる中でも、人口知能(AI)活用のために重要なデータセンター向け事業の売上高が141%増の103億2000万ドルとなり、事前の市場予想の76億9000万ドルを大きく上回った。AI向け半導体の需要増加を受け、第3四半期の売上高見通しも約160億ドル±2%と市場予想の126億1000万ドルを大きく上回った。
アップルは、第2四半期決算にて売上高・一株当たり利益共に事前予想を上回った。ただし、iPhoneやiPadの売上高は市場予想を下回った。

資料:Trading EconomicsよりDailyFXが作成。2023年7月末を100として指数化。8月30日終値時点。
9月の米株注目点
8月の米国株は波乱含みの相場展開であったが、9月はFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催される。金融市場では政策金利の据え置きが予想されているが、年内あと1回の利上げの有無で意見が分かれている。今後の金融政策見通しによって、米国金利が動き、米国株も上下動しよう。
FRBの利上げ終了が近付く中、米国株は今まで以上に米国経済指標の影響を受けよう。特に米国雇用統計や消費者物価指数が重要である。雇用市場の軟化やインフレ鈍化を示した場合、FRBの利上げ終了との見方が一段と強まり、S&P500指数やナスダック100指数などの米国株の上昇圧力になることを見込む。

資料:BloombergよりDailyFXが作成。
S&P500指数の見通し
S&P500指数は、週足チャートで、20期間指数移動平均線でサポートされ反発している。RSIはS&P500の強気モメンタムを示唆する50超えを維持している。一方、MACDラインはシグナルラインを下抜けるS&P500に弱気の「デッドクロス」が示現している。テクニカル面のシグナルは、S&P500にとって中立である。
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 17% | -7% | 3% |
週次 | 23% | -14% | 0% |
テクニカル面で中立の中、FRBの年内追加利上げ観測が高まった場合、S&P500指数は下落しよう。S&P500は、現在4,356レベルにある20日指数移動平均線でサポートされるかに注目。下方ブレイクすると、S&P500の下落圧力が強まり、3月から7月のS&P500の値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント38.2%水準4,302レベルが視野に入る。
一方、FRBの利上げ終了との思惑が強まった場合、S&P500は7月24日週の高値4,607レベルをトライしよう。S&P500が終値ベースで上抜けるとことに成功した場合、8月以降の調整局面が終了した可能性が高まり、年初来の上昇トレンドの再開が視野に入る。
S&P500週足チャート

資料:Trading View
ナスダック100指数の見通し
ナスダック100指数は、週足チャートで、1月から7月までのナスダック100の上昇に基づいたフィボナッチリトレースメント23.6%水準14,696レベルがサポートラインとして機能している。一方、MACDラインがシグナルラインを下抜けるナスダック100に弱気の「デッドクロス」が示現している。テクニカル面のシグナルは、NASDAQ100にとって中立である。
ハイテク株で構成されるナスダック100指数は、S&P500以上に米国金利動向に敏感であり、米国経済指標、米国政策金利見通しが一段と重要になろう。
強い経済指標を受けて米国の追加利上げ観測が高まった場合、引き続き14,696レベルでサポートされるかに注目。サポートされた場合、ナスダック100の地合いが強いことを投資家に印象付けよう。一方、下方ブレイクした場合、ナスダック100の下落の勢いが強まり、心理的節目である14,000レベルへ下落する可能性がある。
一方、FRBの利上げ終了、米国金利が低下した場合、ナスダック100は6月12日週の高値15,285レベルをトライしよう。ナスダック100が終値ベースで上抜けるとことに成功した場合、下落トレンドが終了した可能性が高まり、年初来の上昇トレンドの再開が視野に入る。
ナスダック100指数週足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著