大手格付機関ムーディーズ社が米中小銀行を格下げし、銀行株が一時急落した。格下げの影響、そしてS&P500指数の見通しとは



サマリー
- ムーディーズ社は米中小銀行を格下げ
- 地銀株は一時大幅下落もその後下げ幅を縮小
- S&P500指数の今後の見通し
ムーディーズは米中小銀行を格下げ
大手格付機関ムーディーズ社は、米地銀格下げによる格下げを受け、米国株は下落した。格下げの背景として、3月の米地銀の破綻とFRBによる利上げを受け、経営状況の不安定さが高まっていることを背景としてあげている。格下げされた銀行には、米国における資産規模で20位内に入るM&Tバンクが含まれている。また、格下げ方向で見直している金融機関も公表され、資産管理大手のバンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)や米大手地銀のUSバンコープが対象となった。
米国地銀株で構成されるKBW地銀地銀株指数は、格下げを受け一時4%超下落した。しかしながら、その後下落幅を縮小し、終値ベースで前日比約1.4%の下落と、下落幅は限定的なものにとどまった。KBW地銀株指数は、3月の金融不安の際に、30%超の下落を記録し、その後、株価は回復基調にある。

資料:BloombergよりDailyFXが作成
3月の金融不安を受け、米国地銀の預金残高が一時急激に減少した。しかしながら、金融不安の後退を受け、預金残高は緩やかに回復傾向にある。また、銀行の経営不安の原因となってきたFRB(米連邦準備制度理事会、中銀に相当)の利上げサイクルの終了が視野に入りつつある。今後も地銀の経営状況、格下げの影響を注視する必要があるものの、昨日終わりにかけて地銀株が下落幅を縮小したように、ムーディーズ社による米中堅・中小銀の格下げの影響は限定的と見込む。

資料:BloombergよりDailyFXが作成
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 3% | -7% | -2% |
週次 | 30% | -17% | 2% |
S&P500指数の見通し
フィッチ社による米国債格下げを受け、2022年4月高値4,520レベルを再度下方ブレイクし、同レベルがレジスタンス転換している。MACDラインがシグナルラインを下抜ける「デッドクロス」が成立している。更に、6月以降サポートラインとして機能してきた20日指数移動平均線を終値ベースで下抜けており、テクニカル面では弱気シグナルが点灯している。7月3日高値4,456レベルでサポートされるかに注目。サポートされず7月10日安値4,390レベルを下方ブレイクした場合、5月中旬以降の連続した高値・安値の切り上がりが途絶え、上昇トレンドの終了が明確になる(ダウ理論)。
一方、米国債格下げや米国地銀格下げの影響が和らいだ場合、27日高値4,607レベルを上抜けるかに注目。上方ブレイクした場合、5月中旬以降の連続した高値・安値の切り上がりが継続し、相場の地合いが強いことを投資家に印象付け、上昇トレンドの再開が視野に入る。
S&P500日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著