日本コアコアインフレ率は2022年1月以来初めて伸びが鈍化した。来週に日銀金融政策決定会合を控える中、日本株は金融政策を睨んだ展開が続くことを見込む。金融政策の不透明感が高まる中、日経平均株価の今後の見通しは?



サマリー
- 日本コアコアCPIの伸び鈍化
- 輸入物価は一段のインフレ鎮静化を示唆
- 日銀金融政策決定会合における政策修正及び日本株の見通しは?
日本消費者物価
来週27-28日に日本銀行の金融政策決定会合を控える中、消費者物価指数(CPI)が公表された。ヘッドラインインフレ率の前年比の伸び率は3.3%、食料品を除いたコアインフレ率は3.3%、変動の大きい食料品とエネルギーを除いたコアコアインフレ率は4.2%であった。概ね事前の市場予想通りの結果であるものの、変動の激しい品目を除いた基調的なインフレ圧力を示すコアコアインフレ率は2022年1月以来初めて伸びが鈍化した。先日も当面の金融緩和を示唆した植田日銀総裁を安心させる結果であった。

資料:Trading Economics
遅れて消費者物価(CPI)に反映される傾向のある輸入物価は、前年と比べた伸びはマイナスであり、今後もCPIの鈍化が継続することが見込まれる。ただし、インフレ率は日銀の物価目標である2%を大幅に上ぶれる中、来週の日銀金融政策決定会合で一部金融政策の修正を実施する可能性はある。

資料:BloombergよりDailyFXが作成。
日銀政策修正=日本株株安とは限らない
金融政策の修正を行う場合、日本国債の流動性といった副作用が目立つイールドカーブコントロール政策(日本国債の長短金利操作、YCC政策)の修正を行うことを見込む。修正する場合、日本10年国債利回りを現在0%±0.5%としている変動許容幅を拡大(±0.75%や±1.0%)、コントロールしている年限を10年国債利回りから5年国債利回りに変更といった修正が考えられる。一方、今後のインフレ鈍化が見込まれること、デフレ脱却の兆しが見え始めたばかりである中、日本銀行による金融緩和環境の維持は重要であり、早期に大規模な金融政策修正を実施する可能性は低いと見る。
日銀がYCC政策の修正を行った場合、一時的に日本株安・円高が進展する可能性があるものの、早期の大規模修正の可能性が低いとの思惑が広がり、影響は短期的なものにとどまると見込む。
YCC政策修正に伴い、日本株が上昇する可能性もある。YCC政策に伴い日本国債の利回りが低位で抑え込まれた結果、銀行を含む金融機関は収益悪化懸念から株価が軟調に推移していた。10年国債利回りの変動を許容することで長い年限の日本国債利回りが上昇、金融機関の金利収入改善による収益改善期待から、金融セクターを中心に日本株が上昇する可能性もある。昨年12月に日本銀行はYCC政策の修正を行い、日本10年国債利回りの変動許容幅を0%±0.25%から、0%±0.50%に拡大した。修正後は、TOPIX銀行指数の上昇に牽引されて東証株価指数(TOPIX)全体が上昇してきた。




資料:BloombergよりDailyFXが作成。2022年11月末を100として指数化。
日本株見通し
日経平均株価(先物)は50日指数移動平均線でサポートされているものの、32,000円~33,000円のレンジ相場に移行している。RSIは、概ね中立の50である。
テクニカル面では中立であり、来週の日銀金融政策決定会合を睨んだ展開が続こう。しかしながら、日銀会合後は早期の大規模政策修正期待が低下、当面の金融緩和環境維持との思惑が、日本株のサポート要因となることを見込む。
心理的節目でありレジスタンス転換している33,000円を終値ベースで上方ブレイクした場合、上昇トレンド再開が視野に入る。その場合、日経平均株価は、2008年から2021年にかけての値動きに基づいたフィボナッチエクステンション38.2%水準である33,743円を再度トライしよう。
一方、日本銀行の金融政策修正期待が高まった場合や日銀がYCC政策以外の早期の政策修正を示唆した場合、50日指数移動平均線(現在:31,872円)でサポートされるかに注目。下抜けた場合、4月以来の日本株急上昇トレンドが終了、31,000円が視野に入る。
日経平均株価先物日足チャート

資料:Trading View

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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著