経済指標の悪化がユーロ圏に影響
第2四半期のユーロにおけるパフォーマンスは、対米ドルにおいてほぼ横ばいで終了し、対ポンドでは積極的に売りが入り、対円では大幅に上昇した。より広範なマクロ経済の観点からみると、ユーロ圏の経済は、金利上昇と信用状況の引き締まりが需要を抑制するにつれて低迷した。これは、積極的な金融引き締めによる当然の結果である。第1四半期の国内総生産(GDP)が前期比でマイナスに下方修正されたため、欧州最大の経済国であるドイツはユーロ圏と同様に、テクニカル・リセッション(2四半期連続でマイナス成長)におちいった。第2四半期も第1四半期と同様に、物価上昇が家計を圧迫し、世界的な成長鈍化の中で経済活動が縮小したが、ECBは2023年下半期にこの状況が緩和されると予測している。
グラフ1:テクニカル・リセッション(2四半期連続でマイナス成長)を示すドイツのGDP
出所:トレーディングエコノミクス、チャート作成:リチャード・スノー
さらに、欧州経済をけん引するドイツの製造業部門は、フランス、イタリア、スペインなど他の影響力がある経済国と同様に、深刻な縮小の領域へと落ち込んでいる。製造業部門は通常、サービス部門に先行するが、サービス部門も最近まで回復力を示していたが低下傾向にみえるため、深刻な状況と言える。



チャート1:ドイツの製造業部門が世界の製造業をさらに縮小に導いている
出所:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
ECBは追加利上げの必要性を示唆。コアインフレ率によって状況が変化する可能性もある
金融政策に関しては、ECB当局者が7月に0.25%の追加利上げを実施する意向を示しており、マーケットは9月に同規模の2回目の利上げが実施される可能性があるが、より可能性が高い時期は10月とみており、政策金利は4%まで引き上げられると予測している。
表1:2023年末までの市場予測による利上げ幅
出所:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
過去に実施した金融政策の引き締めや、信用収縮、財政支援の撤回を受けて、2023年と2024年のGDP予測は0.1%下方修正された。しかし、エネルギー価格の下落と供給条件の改善により、個人・世帯の裁量所得が増加する見通しがあることから、2023年後半には経済成長が加速するとECB理事会は予測している。
ただし、広範な物価上昇圧力が低下しないことが大きな脅威として挙げられる。総合インフレ率は大きく進展したが、コアインフレ率はピークに達したようにみえるものの、依然として利上げサイクルが始まって以来、最高値に近い水準を示している。経済指標の悪化を考慮すると、ECB理事会はコアインフレ率の大幅な改善を期待しているだろう。もし実現すれば緊急性が低下し、さらなる利上げの必要性も低くなる可能性がある。ECB理事会は総合インフレ率が2023年末までに3%になると予測しているが、コア指数は労働需給の逼迫によってあまり下がらない可能性が高い。
グラフ2:EU 総合インフレ率・コアインフレ率
出所:Refinitiv、チャート作成:リチャード・スノー


