米欧の中銀イベントと外為市場の展望について
【サマリー】
- 今週の米ドル相場の焦点はFOMC後のパウエル会見となろう
- パウエル会見が“タカ派”ならば米ドル高、“ハト派”とならば米ドル安を予想する
- ドル円の展望と上下のチャートポイントについて
- 欧州中央銀行(ECB)理事会とユーロドルの焦点について
焦点はパウエルFRB議長の会見
今週は米連邦公開市場委員会(FOMC、1月31日~2月1日)、欧州中央銀行(ECB)理事会(2月2日)そして英中銀金融政策委員会(MPC、2月2日)が重なる「中銀イベントウィーク」となる。
目先、市場参加者の関心はFOMCに集まるだろう。今回は経済見通し(SEP)と政策金利の見通し(ドットチャート)は公表されない。
よって各市場の参加者は、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見内容から今後の金融政策の方向性を見出そうとするだろう。



“タカ派“のパウエル会見と外為市場の展望
短期金融市場では、3月の利上げ停止と今年後半の利下げを織り込む動きが見られる。米国の債券市場では金利の上昇が抑制され、株式市場では上昇幅が拡大している。
この状況でパウエルFRB議長がインフレ抑制重視の姿勢を崩さず、市場のはやる期待をいさめることになれば、米債市場では利回りに反発の圧力が高まろう。株式市場は下落することが予想される。
米金利の上昇と米株安が同時に発生する場合、外為市場では最も米ドル買いの圧力が高まりやすい。一方、オセアニア通貨や新興国通貨は対米ドルで下落幅が拡大することが予想される。欧州通貨も対米ドルで下落することが予想される。
一方、ドル円(USDJPY)は、米金利の上昇とそれにともなう米ドル高の圧力が円買い圧力を上回る展開が予想される。このケースでは、下で述べる21日線(MA)の突破が焦点となろう。
“ハト派“のパウエル会見と外為市場の展望
一方、パウエルFRB議長が景気の先行きリスクを重視し、3月の会合で利上げ停止のシグナルを送ってくる場合は、米金利が低下し米国株が上昇(または急騰)する展開が予想される。
このケースでは、外為市場で米ドル売りの圧力が最も高まりやすい。オセアニア通貨、新興国通貨そして欧州通貨は対米ドルで上昇する展開が予想される。
一方、ドル円はリスク選好相場の下で米ドル安と円安が交錯する展開が予想される。だが、このケースでは米金利の低下に影響され、ドル円は下値をトライすることが予想される。実際にドル円が下落する場合は、下で述べる128.00レベルおよび今月16日の安値127.22レベルのトライが焦点となろう。
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | -7% | 11% | 1% |
週次 | 10% | -12% | -2% |
ドル円の展望とチャートポイント
21日線の攻防
ドル円(USDJPY)は現在、21日線(MA)の攻防が続いている。
今月19日以降、米金利は下げ止まりの展開となっている。しかし、21日線がレジタンスラインとしてドル円の上昇を止めている。この現状を考えるならば、ドル円の地合いは弱い。
今週のドル円は、FOMCおよび1月米雇用統計の内容で上下に振れる展開が予想される(米雇用統計の焦点については別のレポートで述べる)。
これらのイベントが米ドル買い要因となっても21日線すら突破できない状況が続く場合は、来週以降の下落幅拡大を警戒したい。
一方、ドル円が21日線の突破に成功する場合は、132円を視野に上昇幅の拡大を予想する。このケースでは、フィボナッチ・リトレースメントの各水準での攻防に注目したい。
38.2%の水準131.40レベルの突破は132円台を目指すシグナル、半値戻しの水準132.70レベルの突破は133円台を目指すシグナルと想定しておきたい。
一方、FOMCや1月米雇用統計が米ドル売りイベントとなる場合、ドル円は128円台へ下落する展開を予想する。
ドル円が128円台の維持に失敗する場合は、今月16日の安値127.22レベルを視野に入れる展開が予想される。
ドル円のチャート
チャート:TradingView / 日足(昨年12月~)
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | -11% | 22% | 6% |
週次 | -12% | 12% | 1% |
ECB理事会とユーロドルの焦点
大幅利上げに対する反応
FOMCの翌日には、欧州中央銀行(ECB)理事会が開かれる。
3月の会合でECBが利上げ幅を0.25%に縮小すると一部で報道されたが、ラガルド総裁らECBメンバーからは利上げ幅縮小の観測を否定する見解が聞かれた。
2月の0.5%利上げがすでに市場で織り込みであることを考えるならば、今回の理事会の焦点は、持続的な大幅利上げの姿勢があらためて確認される場合のユーロ相場の反応にある。
ラガルド総裁がインフレ抑制のための持続的な大幅利上げの必要性をあらためて強調する場合は、ユーロ買いで反応する可能性がある。このケースでのユーロドル(EURUSD)の焦点は、ユーロ買いの強さにある。
特にFOMCが米ドル買いイベントとなってもそれを凌駕するユーロ高となれば、ユーロドルの地合いの強さを市場参加者に印象付けよう。このケースでは、1.09の “サポート転換” と1.10トライおよびブレイクが焦点となろう。
一方、ECBの持続的な大幅利上げの姿勢が確認されてもユーロドルの上昇幅が限定的となる(ユーロ買いが限定的となる)場合は、今後ユーロ相場の焦点が利上げから景気リスクの方にシフトするシグナルとなり得る。
FOMCが米ドル買いイベントとなる一方でECB理事会がユーロ買いイベントとならない場合、ユーロドルの調整ムードが高まる展開が予想される。このケースでは、レジタンスからサポートへの転換が確認された1.0770レベルの維持が焦点となろう。今日現在、1.0770台には21日線(MA/1.0773レベル)が上昇している。
ユーロドルのチャート
チャート:TradingView / 日足(22年12月~)