【サマリー】
- 米債市場では利上げサイクルの終了を意識する動きが続いている
- FRBのバランスシート拡大の可能性も考えるならば米ドル安を想定する局面にある
- リスク回避(株安)の局面では円高リスクを警戒すべき局面にある
- 米ドル相場(ドルインデックス)の見通しとテクニカル分析について
米ドル安のさらなる進行を想定
23日の外為市場では、対主要通貨で米ドル安優勢の展開となった。
米ドル相場のトレンドを示すドルインデックス(DXY)は、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準102.01レベル(102.00)を試す動きが見られた。
米債市場では連邦準備理事会(FRB)による利上げサイクルが近く終了することが意識され、2年債利回りが低下基調にある。10年債利回りも同様の展開となっている。今後も金融システム不安が続く場合は、FRBのバランスシートが拡大することが予想される。
インフレ抑制の道半ばでパウエルFRBが政策の転換を余儀なくされる場合、中長期スパンではインフレの再加速とそれによる景気リスクが意識されるだろう。
いずれによせ米金利は今後、低下トレンドを形成することが予想される。ゆえに外為市場は、米ドル安のさらなる進行を警戒する局面に転じている。
米金利のチャート
TradingViewの5分足チャート:23年2月~
冒頭で述べたとおり、ドルインデックス(DXY)は102.00を試す状況にある。昨日はかろうじて102ポイント台を維持したが、MACDはゼロラインを下回り米ドル安の進行を示唆する状況にある。
今日以降も米金利の低下を想定し、ドルインデックスの102ポイント(フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準102.01)割れを意識したい。102ポイントの下方ブレイク場合は、米ドル安がさらに進行するシグナルとなろう。
一方、ドルインデックスの反発局面では、103ポイント台への再上昇が焦点となろう。だが、上で述べたとおり米金利は低下基調へ転じている。そしてFRBのバランスシートも拡大する可能性がある。これらの状況を考えるならば、ドルインデックスが103ポイント台へ上昇しても50日MA(103.44レベル)で反落する展開、つまり50日MAの “レジスタンス転換“ を想定しておきたい。
ドルインデックスのチャート
TradingViewの日足チャート:23年2月~



円高のリスクを警戒
23日の外為市場では、円買い優勢の展開となった。
円相場の動向:3月23日
基準日:23年3月22日
イングランド銀行(英中央銀行)は23日、金融政策委員会のメンバー9人のうち7人が利上げを支持し(2人は据え置きを主張)、25ベーシスポイント(0.25ポイント)の利上げを決定した。インフレの動向次第では追加の利上げに含みを持たせた。
当初、ポンド円(GBPJPY)の反応は限定的だった。しかし、利上げに対するポンド買い(対米ドル)は限定的であり、ポンド円はドル円(USDJPY)の下落に連動し、NYタイム以降は円高優勢の展開に(下の5分足チャートを参照)。そして節目の160.00を一時下方ブレイクする局面が見られた(安値159.94レベル)。
ユーロ円(EURJPY)や豪ドル円(AUDJPY)といった他のクロス円でも円高優勢となった。昨年の円安をけん引したのはドル円だった。
しかし、現在の外為市場は上で述べたとおり、米ドル安の進行を意識する状況へ転じている。ゆえにドル円は今後、下落を意識する展開が多く見られよう。この状況で株安(リスク回避相場)となる場合は、昨日のようにクロス円でも円高優勢の状況を意識する局面にある-この点を昨日のポンド円は示唆している。
ポンド円とドル円のチャート
TradingViewの5分足チャート:23日17時~
テクニカル分析入門
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ドル円の見通しとテクニカル分析について
130.00-130.40ゾーンの攻防
現在のドル円(USDJPY)は、130円台の維持が焦点となっている。
昨日は、IG為替レポートで取り上げたフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準130.40レベルをブレイクし、安値130.32レベルまで下落する局面が見られた。MACDは完全にゼロラインを下回る状況にある。
一方、通貨オプション市場では、リスクリバーサル(25デルタ/1ヶ月および3ヶ月)のドル・プットへの傾きがひとまず後退している。
上の状況を考えるならば目先のドル円は、130.00-130.40のゾーンを意識する展開が予想される。
ドル円とリスクリバーサルのチャート
出所:ブルームバーグのデータ / 日足:23年2月~ / 1M:1ヶ月, 3M:3ヶ月
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | -10% | -1% | -4% |
週次 | 3% | -7% | -4% |
130円以下の攻防を意識する局面に
だが、米債市場では利上げサイクルの終了を意識する状況にある。よって、ドル円の130円割れを常に意識しておきたい。
実際にドル円が130円以下の攻防となる場合、注目すべきは “130.00のレジスタンス転換” である。これが確認される場合は、2月2日の安値128.08レベルを視野にドル円の下落を想定しておきたい。
ドル円が128.08レベルをも難なく下方ブレイクする場合は、1月の安値127.22レベルを視野に下落幅が拡大する可能性が高まろう。
一方、130.00-130.40ゾーンでドル円が反発しても、50日MA(132.58レベル)の突破が確認されない限り、130円割れを意識する状況が続くと予想する。
ドル円のチャート
TradingViewの日足チャート:年初来