サウジアラビアとロシアは、原油の供給制限を年末まで延長することを発表した。市場では10月までの延長とみられていた。原油の供給減との思惑が高まったが、原油価格の今後の見通しとは



サマリー
- サウジとロシアは原油供給の制限延長
- 原油需給のひっ迫
- 原油価格の見通し。レジスタンス突破なるか
サウジアラビアとロシア、原油供給制限延長
サウジとロシアは10月までと予想されていた原油供給制限を年末まで延長すると表明した。サウジは日量100万バレルの自主減産、ロシアは日量30万バレルの原油輸出制限を延長する。原油などの市場の状況に応じて、減産・輸出制限の規模は毎月見直される模様である。
原油供給制限延長との報道を受け、原油価格は上昇した。北海ブレント原油は昨年11月16日以来はじめて90ドルを超えた。WTI原油も10カ月ぶりの高値を記録した。
WTI原油と北海ブレント原油日足チャート

資料:Trading View
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | -11% | 13% | 3% |
週次 | -8% | 4% | 0% |
原油需給ひっ迫
ロシア、サウジの供給制限に加え、米国経済が底堅く推移していることなどから、原油の需給引き締まり懸念が高まっている。WTI原油先物の第1限月(直近に清算を迎える原油先物)と第2限月(次に清算を迎える原油先物)の価格差をみることでわかる。第1限月の方が価格が高い状態(価格差がプラス)は、足元の原油の需給が引き締まっていることを示唆している(バックワーデーション)。一方、第1限月の方が価格が低い状態(価格差がマイナス)は、足元の原油の需給が緩んでいることを示唆している(コンタンゴ)。
第1限月の方が価格が高いバックワデーションの状態であり、原油の需給ひっ迫に伴い、価格が一段と上昇する可能性がある。
WTI原油先物 限月間の価格差
(バックワーデーションもしくはコンタンゴ)

資料:Trading View



原油価格見通し
WTI原油価格は、原油供給制限延長を受け、一時昨年11月から今年3月の原油価格の値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント78.6%水準87.45ドルを上方ブレイクしたものの、その後反落し、現在86.7ドル前後で推移している。
テクニカル面では、2022年6月以来はじめて、9,20,50,200日指数移動平均線が上向きかつ、上から順に並ぶ原油に強気の「パーフェクトオーダー」が成立している。また、MACDラインがシグナルラインを上抜ける「ゴールデンクロス」が成立しており、原油価格に強気シグナルが点灯している。
くわえて、原油の需給引き締まり観測や、FRBの利上げ終了が近いとの思惑が原油価格をサポートし、原油価格の一段高を見込む。昨年11月から今年3月の原油価格の値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント78.6%水準87.45ドルが視野に入る。強固なレジスタンスである同レベルを上方ブレイクすると、原油価格の上昇トレンドが一段と鮮明になることを見込む。
一方、原油価格の下値として、8月10日高値84.85ドルがサポートとして機能するかに注目。下方ブレイクすると、次の下値の目途として4月12日高値83.49ドルをトライしよう。
WTI原油価格日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著