ヘッジファンドは原油価格に対する見通しを強気に転じつつある。原油価格の逆風となってきたFRBの利上げ終了が近付くにつれて、一段と見通しを強気に転じ、原油価格の上昇要因となる可能性がある。27日のFOMC(米連邦公開市場委員会)を控えた原油価格の見通しは?



サマリー
- ヘッジファンドは原油価格に対する弱気見通しを転換させつつある
- FRBの利上げ終了が近付く中、一段と強気ポジションを積み増す余地
- このような中、原油価格の見通しは?
原油先物のポジション
原油価格に対するヘッジファンド等(投機筋)の見通しに変化の兆しが見られる。各国中銀の利上げ等に伴う世界景気の減速懸念から、ヘッジファンドは原油価格の先行きに悲観的であった。WTI原油先物のショートポジション(原油先物の売り持ち)が積み上がっていた(原油価格の下落要因)ことから確認できる。しかしながら、ショートポジションを削減し、ロングポジションを積み増しており(原油価格の上昇要因、原油先物買い持ち)、原油価格に対して弱気から強気に見通しを変化させつつある。
- 米FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げ終了が近付いていること
- ロシアとサウジアラビアが原油の減産・価格安定に向けて協調姿勢を示していること
- 米国景気が底堅く推移していること
- 中国の景気刺激策に対する期待感
などが、見通しを強気に転じつつある背景にあろう。特に、FRBによる2022年以降の利上げは、原油をはじめたとしたリスク資産の下押し圧力となってきた。原油先物のネットロング(ロング―ショートポジション)は、依然として2016年来の低水準である。FRBの利上げ終了が一段と明確になるにつれて、見通しを更に強気に転換し、ロングポジションを積み増し、原油価格の上昇圧力となる可能性がある。

資料:BloombergよりDailyFXが作成
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 5% | -11% | -4% |
週次 | 9% | -23% | -11% |
原油価格見通し
WTI原油価格は、6月後半に67ドル台まで下落後、77ドル台まで急上昇した。その後、短期的な保ち合い期間のチャートパターンである「上昇ペナント」を形成していたが、上方トレンドラインを終値ベースで上抜け、上昇トレンドの再開を示唆している。上昇ペナントは、相場が大きく上昇した後の短い保ち合い期間であり、その後上方トレンドラインをブレイクし、以前と同じ上昇方向への動きが継続することを示唆する。
テクニカル面で強気のシグナルが点灯し、米国の利上げ局面終了が視野に入りつつある事に加え、主要産油国であるロシアやサウジも原油減産や価格安定に向けて協調姿勢を示しており、4月24日高値79.14ドルが視野に入る。
一方、原油価格のリスクシナリオとして、FOMCにて一段の利上げが示唆され、世界景気の後退懸念が高まった場合があげられる。その場合、原油価格が6月21日高値72.68ドルでサポートされるかに注目。サポートされた場合、原油相場の地合いが強いことを投資家に印象付けよう。一方、下方ブレイクした場合、70ドルに向けて下落するシグナルとなる。
WTI原油価格日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著