WTI原油、中国、政策金利、景気支援、人民銀、PBOC、利下げ―トーキングポイント



欧米の金融政策決定会合が終了した。FRBは政策金利を据え置き、次回FOMC以降での利上げ再開に含みを持たせた。ECBは、利上げを行い、次回会合以降の利上げ継続を示唆した。
中国では、15日に主要経済指標が発表され、ゼロコロナ政策撤廃以降も景気回復が遅れていることが改めて示された。経済が低迷していることを受け、中国当局は、徐々に景気支援に転換しつつある。
中国人民銀行(中央銀行)は、13日に7日物リバースレポレポートを従来の2.0%から1.9%に引き下げた。15日には、1年物貸出金利が2.75%から2.65%に引き下げられた。20日公表予定の事実上の政策金利と位置付けられるローンプライムレートも引き下げる可能性が高まっている。
人民銀行の景気テコ入れ姿勢は、中国景気、資源、資源国通貨にとってプラスであるものの、金融政策のみで景気の持ち直しは困難と見られる。世界景気の減速も進む中、中国当局からの大幅な財政刺激策がない限り、中国景気の急回復、それに伴う資源需要の回復は見込みづらい。
しかしながら、中国地方政府の隠れ債務は2022年末に1100兆円を超える等、コロナショックを経て大きく増大する中、更なる債務膨張に繋がる大規模な財政刺激策を打ち出しづらいと予想する。
15日公表中国経済指標

資料:DailyFX.com 経済指標カレンダー
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 8% | -7% | -2% |
週次 | 2% | 1% | 1% |
原油価格見通し
15日の原油価格は、中国人民銀行が1年物MLF金利を引き下げ、景気支援強化したことや、原油輸入国である中国の5月の石油精製量が高水準であったことを受け、原油需要が高まるとの思惑から、原油価格は上昇した。米ドル安の進展も原油価格上昇に寄与した。
原油価格の上昇に伴い、下落トレンドからの反転を示唆する陽の包み足(抱き線)が示現している。更に、67ドルで反転し、水平サポートラインとして機能していることを示している。これらは原油価格の見通しにとってプラス材料である。
一方、20,50、200日指数移動平均線は依然として下向きで下落トレンドを示唆している。加えて、RSIは50を下回っており、弱気モメンタムが継続している。
テクニカル面では、強弱入り混じるシグナルが点灯しており、原油価格に中立である。しかしながら、中国による大幅な財政刺激策、中国による資源需要の急拡大が見込めない中、原油価格の見通しは下落方向で見ている。引き続き水平サポートライン67ドルでサポートされるかに注目。下方ブレイクした場合、3月以来の65ドル割れが視野に入る。
原油価格が上昇した場合、20日指数移動平均線(現在70.78ドル)を上方ブレイクするかに注目。ブレイクした場合、下落トレンドが終了、原油の下落見通しを撤回する可能性が高まり、50日指数移動平均線(現在72.51ドル)上抜けが視野に入る。50日指数移動平均線を上抜け、更に73.21ドルの水平レジスタンスを上抜けると、原油価格の見通しを強気に転換する可能性が高まる。
WTI原油価格日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著