WTI原油、戦略備蓄、リグ―トーキングポイント



バイデン政権は原油を購入
バイデン米政権は、石油の戦略的備蓄(SPR)の補充用に600万バレルの原油を購入することを発表したことを受け、原油価格が上昇している。加えて、米国のドライブシーズンに向けて原油(ガソリン)需要が底堅いとの思惑や、サウジとロシアが減産・原油価格安定に向けて協調姿勢を示していることも価格のサポート要因になっている。
ロシアのウクライナ侵攻以降、原油価格が一時高騰した。原油価格高騰を抑える目的で、バイデン政権はSPRからの原油放出を実施した結果、在庫の水準が極端に低水準になっている。そのため、原油価格が下がったタイミングで、米政権はSPRの原油在庫の積み増し(原油価格の上昇要因)を実施している。SPRによる原油補充は、今後も原油価格の下支え要因になろう。バイデン米政権は原油価格が67-72ドル近辺でSPR補充のための原油購入を示唆している。

資料:BloombergよりDailyFXが作成
原油供給が低下
Baker Hughes社から原油を採掘するための装置(米国リグ)の稼働数が週末に公表された。リグ稼働数の増加は、将来の原油の供給増に繋がり、需給が緩むとの観測から価格の低下要因となりうる。一方、リグ稼働数の減少は、将来の原油の供給増に繋がり、需給引き締まりとの観測から価格の上昇要因となる。前週と比べて、原油のリグ稼働数が減少していることが示された。年初来、原油のリグ稼働数は、緩やかな減少傾向にある。

資料:BloombergよりDailyFXが作成
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | -11% | 13% | 3% |
週次 | -8% | 4% | 0% |
原油価格見通し:強気シグナル点灯
原油価格は、バイデン政権の原油購入方針等を受けて上昇し、水平レジスタンス73.21ドルを上方ブレイクした。6月のOPECプラス会合にてサウジアラビアが自主減産を発表して以降初めてである。結果、上昇トレンドへの反転を示唆する逆ヘッドアンドショルダー(逆三尊)が成立、強気のシグナルが点灯しており、6月5日高値74.92ドル(1バレル)が視野に入る。更に上昇の勢いが衰えなかった場合、4月末の高値76.72ドルへの上昇を見込む。
一方、下値として50日指数移動平均線(現在71.77ドル)でサポートされるかに注目。サポートされた場合、上昇トレンドに転換したことが明確になり、再度高値を目指すことを想定。下方ブレイクした場合、最近の上昇が一時的と投資家に印象付け、70ドルへ再度下落する可能性がある。
WTI原油価格日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著