※2023年7月7日14時43分更新
円の値動き - 対米ドル・ユーロ・豪ドル



日本の5月平均賃金が予想を大幅に上回ったことで、日銀が過度な緩和策を修正するハードルが下がったとの見方から円を買う動きが進んだ。
厚生労働省は7日午前、5月の毎月勤労統計調査(速報)を発表した。労働者1人あたりの平均賃金を示す現金給与総額(名目賃金)は前年同月比2.5%増の28万3,868円と、予想(同1.2%増)、4月(同1.0%増)をともに大きく上回った。高水準の賃上げ回答が目立った今春闘の結果が反映され、過去数十年で最大の賃上げが実現した。日銀が今年中に金融政策を修正することはないと予想する向きも多いが、複数のアナリストは、日銀は今月後半にイールドカーブコントロール(YCC)政策を微調整すると見ている。
世界経済の底堅さが続き、その結果として国債利回りに上昇圧力がかかり、YCC政策の調整を促すかもしれない。しかし、極端な金融引き締めは金融システムのひずみを引き起こし、信用収縮につながる恐れがあるため、金融緩和に動かざるを得ない状況となる可能性は否定できない。先日発表された日銀政策決定会合(6月開催分)における主な意見では、参加者の1人が、日銀は市場機能の改善と「高いコスト」軽減のため、YCC政策の見直しを検討すべきと発言していた。
米ドル/円 240分足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView、下記注意書き参照
日銀は今月初め、始まったばかりの景気回復を支え、インフレ目標を持続的に達成するため、大規模金融緩和策を据え置いた。特に注目されていたYCC政策の修正もなかった。植田和男日銀総裁は、2%のインフレ目標を安定的かつ持続的に達成するにはまだ時間がかかるため、日銀は現在の政策を「忍耐強く」維持すると述べた。
一方、ドル/円は先日、昨年20年超ぶりに介入を引き起こした水準に近い145.00を付ける場面があり、市場は引き続き日本当局による介入を警戒している。日本の政府高官は、いかなる選択肢も排除していないとの見解を示している。
米ドル/円 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
米ドル/円:まだ反転の兆しはない
テクニカルチャートでは、色分けされたローソク足チャートが示すように、米ドル/円は最近、より広範な強気トレンドの中でのもみ合い局面に移行している。4時間足チャートでは、89期間移動平均線と一目均衡表の雲下端が位置する水準に強い収束サポートがある。この水準は先月、米ドル/円の反発を引き起こしており、かなり強いサポートと言える。従って、このサポートを上回る水準を維持する可能性がある。反対に、このサポートを下方ブレイクした場合は、4時間足チャート上の200期間移動平均線(141.00付近)に向かって下落するだろう。
ユーロ/円 月足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
ユーロ/円:買われ過ぎだが、上昇トレンドは維持
ユーロ/円は、2013年からのわずかに右肩上がりのチャネルの上端というレジスタンスを試している。広範な上昇トレンドは維持されているが、買われ過ぎの様相を呈しており、目先もみ合い局面となる可能性は否めない。価格は、2016年からのピッチフォークチャネルの中央線と重なる重要な収束レジスタンスである2014年の高値149.75を上回った後も上昇し続けている。このレジスタンスを決定的にブレイク(月足終値で2回上抜ける)すると、2008年の高値170.00に向けて上昇する可能性が開かれる。
豪ドル/円 月足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
豪ドル/円:今のところ上昇は一服
月足チャートでは、弱気のダイバージェンス(モメンタムの低下に伴う価格の平坦化)が示現しており、豪ドル/円の上昇は短期的には勢いを失いつつあることを示唆している。最近確立されたレンジ86.00-98.50エリアでの横ばいが続く可能性があるが、86.00を割り込むと、上昇圧力の低下が示唆される。
このチャートでは、青いローソク足は強気が優勢な局面、赤いローソク足は弱気が優勢な局面を示しています。黒いローソク足はもみ合い局面を表していますが、時にはトレンドの終焉を形成することもあります。
注:ローソクの色は予測ではなく、単にその時のトレンドを示しています。実際、ローソクの色は次のローソクの際に変化することがあります。200期間移動平均線付近やサポート/レジスタンス付近、もみ合い/不安定な値動きの際は、本来のトレンドとは異なる、騙しのパターンが発生する可能性もあります。筆者は情報の正確さを保証しかねます。また、過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスを示唆するものではありません。本情報のご利用は、自己責任にてお願いします。
--- DailyFX.com ストラテジスト マニッシュ・ジャラディ著
ジャラディ氏に連絡するには、Twitterで @JaradiManish までお願いいたします。