※2023年4月27日13時50分更新。
日経平均株価、日本銀行、金融政策決定会合―トーキングポイント
- 日銀会合は日本株をサポート?
- 日本株は海外株に比べ出遅れ感が鮮明
- 日銀の金融政策修正が意識された場合は金融株、現状維持の場合は輸出セクター中心に日本株市場を牽引する可能性
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大規模政策修正がなければ日本株は上昇!?
植田日銀総裁のもとでの初の金融政策決定会合の結果が4月28日に公表される。日本銀行総裁就任会見にて現行の金融政策を当面維持することを示唆したことから、一時に比べ早期の金融緩和修正観測は後退している。一方で、インフレ見通しの引き上げをすることが見込まれている。今回新たに2025年度のインフレ見通しが公表される。前回1月の日銀展望レポートでは、インフレ率(除く生鮮食品)は2023年度が1.6%、2024年度が1.8%(共に中央値)であった。今回の見通しでは、2024ないしは2025年度のインフレ見通しは、2%目標には到達しないものの、近い水準が示される可能性が高い。そのため、2%目標に近いとの判断から近い将来に一部金融政策の修正を実施する可能性がある。特に、国債の流動性の枯渇を招いているイールドカーブコントロール(YCC)政策の修正等の実施が予想される。
日本銀行インフレ見通し

資料:1月日銀展望レポートより抜粋。政策委員の中央値。
YCC政策の修正に関しては、日本株市場にとってプラスの側面とマイナスの側面がある。低金利環境(日本国債の利回りを低位で安定させる)を維持することは、日本株を含めたリスク資産への資金流入を促進する効果や企業の資金調達コストを低くし、業績を改善させる効果等が期待できる。一方で、日本株への負の側面として、国債の利回りを低位にすることで金融機関の金利収入が低下、収益悪化懸念から金融機関を中心とした株価下押し圧力となる。
昨年末に日銀がYCC政策を修正した際も、一時日本株は下落したものの、その後上昇に転じ、欧米で金融不安が発生するまでは上昇基調であった。日本銀行が早期に金融政策修正を行う場合も、現在の高インフレは外的要因が大きいことから、大規模な金融政策修正は見込まれない。また、賃金上昇といった明るい兆しが芽吹き始めたばかりであり、金融緩和環境の継続が必要である。早期の金融政策修正を実施した場合も、YCC政策の再修正といった小幅な修正に留まると思われ、昨年末のように日本株にプラスの影響が大きい可能性がある。
昨年末に日銀がYCC政策を変更した際の日本株と日本国債の動き

資料:BloombergよりDailyFX.comが作成。2022年12月19日から2023年3月9日。
金融不安以降、日本株は海外株と比べて出遅れている。日本の金融機関は欧米の金融機関と比べて金融不安の影響は限定的であるにも関わらず、金融セクターを中心に出遅れており、上昇余地が依然としてあることを示唆している。日銀がYCC政策の修正を示唆した場合、出遅れている金融株を中心に日本株が上昇する可能性がある。一方、金融政策の当面維持が強く示唆された場合、日銀と海外中央銀行の金融政策格差から円安が進展、輸出セクター中心に日本株が上昇する可能性がある。リスクとしては、日銀がイールドカーブコントール政策以外の金融政策、マイナス金利政策の撤廃等を示唆した場合、金融環境が急速に引き締まるとの思惑から日本株の下落要因となるものの、可能性は低いと思われる。日本株が一段と上昇する場合、日経平均株価先物は2022以来の2万9000円台回復が視野に入る。

資料:BloombergよりDailyFX.comが作成

資料:BloombergよりDailyFX.comが作成



-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著