※2023年8月10日17時09分更新
金、金/ドル - 値動きと見通し
- 実質利回りが上昇する中、金相場の地合いは悪化しているようだ
- 直近では、金/ドルが主要サポートを割り込み、下降リスクが高まっている
- 金/ドルの注目すべき重要な水準とは?



実質金利の上昇がついに金価格の重しとなり始めているようだ。政策金利水準が「higher for longer(より高く、より長く)」定着するという認識が広がる中、物価上昇圧力は緩和、インフレ期待は後退の方向に向かってはいるが、名目金利の上昇を受けた実質利回りの上昇が徐々に金/ドルをむしばみ始めている。
金 vs米10年債利回り

資料:ブルームバーグ、エクセルで作成
金先物相場は概ねレンジ内で推移しており、実質利回りとの格差が広がっている。金相場は利回りのつかない資産であり、実質利回りの上昇は利子のない金資産を保有する機会費用を増加させる傾向にある。
金/ドル 240分足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
テクニカルチャートでは、金/ドルは7月中旬の安値1,945と7月下旬の安値1,953を含む重要な収束サポートを下回り、6月の安値1,892に向かい下降する可能性がある。この下落リスクについては、7月30日付記事(英語のみ)でも指摘した。価格は7月下旬以降、下値の切り下げパターンが続いており、これは7月上旬の反発が終わったことを示している(240分足チャート参照)。
金/ドル 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
この値動きは、7月中旬に、6月上旬の高値1,983という堅いレジスタンスを試したものの突破には至らなかった流れに続くものである。このレジスタンスは、日足チャート上の一目均衡表の雲上限をわずかに下回る水準に位置している。7月25日付記事「金価格見通し:反発は終わり? 米FOMCを控えた金/ドルの値動きを探る」もご参照ください。
金/ドル 週足チャート
金/ドルは現在、200日移動平均線、6月の安値、そして2023年初頭からの上昇チャネルの下限ラインが重なる重要なサポートを試している(週足チャート参照)。これを下方ブレイクすると、2月の安値1,805に向けて下落する可能性が出てくる。重要なことは、ブレイクアウトが実現すれば、ここ数カ月、より長期の時間枠チャートで醸成している弱気な展開が強まることを意味する点である。3月28日付記事「金価格見通し:難しい2,000ドルの壁超え」、および4月16日付記事「金価格の週間見通し:金/ドルは慎重な姿勢に転じる時が来た?」をご参照ください。
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
--- DailyFX.com ストラテジスト マニッシュ・ジャラディ著
ジャラディ氏に連絡するには、Twitterで @JaradiManish までお願いいたします。