金、XAU、実質利回り、FRB、CPI、CFTC、テクニカル分析見通し – トーキングポイント
- 米ドルと米実質利回りが軟化する中、金先物相場は上昇が続くように見える
- 7月のCPIが下落リスクとなるが、大きく上振れる内容でなければ相場下押しの可能性は低い
- 金先物相場(XAU/USD)は1,800の水準を突破できず、その後の上値は重い



金先物価格は対米ドルで、8月の初めから1.5%以上上昇しており、3月以来となる月間での上昇となりそうな勢いである。先月、2022年の最低水準まで下落した後、価格は上昇に転じ、現在4週連続で上昇している。週ベースでの連続上昇としては、2021年8月以来、最長となる。
金先物相場のさらなる上昇はあるだろうか? この上昇のきっかけとなった要因を検証すれば、その答えを導くのに役立つかもしれない。市場では7月に、米連邦公開市場委員会(FOMC)が予想より早く利上げサイクルを取りやめざるを得なくなるとの見方が強まり、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ観測は後退し始めた。その結果、米国の実質利回りと米ドルが下がり、金利のつかない、米ドルの動向に左右される資産である金の価値が高まった。

それが金のトレーダーを油断させた。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、7月26日までの1週間の投機筋のショートポジションは、2018年11月以来の高水準となった。価格が上昇すると、それらのショートポジションは減少し、8月2日までの次週には23.3%減少した。 これは、トレーダーが売り建てした取引を買い戻すため、その過程で相場を押し上げることにより、相場がさらに上昇するというショートカバーの現象を示唆している。
FRB高官らの発言により、2023年にFRBが利下げに動くという市場の観測は後退したが、FRBはすでに200ベーシスポイント(bp)以上利上げを実施しており、9月のFOMC会合以降は引き締めペースが緩やかになると見られている。市場では9月21日のFOMC会合で75bpの利上げ実施との見方が強まっているが、50bpsの利上げも視野に入っている。しかし、その後は利上げのペースが鈍化すると見られている。
10日(日本時間の夜)に発表される米消費者物価指数(CPI)は、金先物相場にとってリスクとなる。アナリストは、7月の総合CPIは前年同月比9.1%上昇から8.7%上昇へと伸びが鈍化すると予想しており、利上げが意図した通りに機能していることを示すと見られている。予想を上回る数値になれば、タカ派的な利上げ観測が再燃する可能性がある。とはいえ、FRBはすでに積極的な金融引き締めを実施しているため、FRBの方針を大きく変えるには、CPI数値が小幅に予想を上回る程度ではなく、大きなサプライズが必要になると思われる。ゆえに、金先物相場はさらに上昇するように見える。

金先物相場(XAU/USD) テクニカル分析見通し
9日のニューヨーク金先物相場は、心理的水準である18,000を突破できず、やや弱含みで推移した。最近、上抜けた50日単純移動平均線(SMA)が下値抵抗線となっている可能性がある。MACD(マックディー)とRSI(相対力指数)は小動きとなっているが、それぞれの中間値を上回った水準にとどまっている。1,800を突破すると、フィボナッチリトレースメント78.6%の水準が視野に入るだろう。相場が下落した場合は、8月安値のすぐ下にあるフィボナッチリトレースメント38.2%が下値サポートの焦点となろう。
金先物相場(XAU/USD) 日足チャート

資料:TradingView
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--- DailyFX.com アナリスト トーマス・ウェストウォーター著
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