金、金/米ドル、米ドル、実質利回り、米PPI - トーキングポイント
- アジア太平洋地域の取引で金先物相場は1,700のすぐ上の水準で底堅く推移
- FRBの利上げ観測が高まり、金と反比例の関係にある米実質利回りは数年来の高水準に上昇
- 米PPIが金先物に打撃を与える可能性がある



金先物相場は13日のニューヨーク商品取引所で急落した後、現在は1,700のすぐ上の水準で取引されている。13日に米国で発表された消費者物価指数(CPI)が予想以上に強い内容となり、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ観測に関する市場の見方に変化が生じた。オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)によると、FRBは今月後半に100ベーシスポイントの利上げを実施する可能性があるという。8月のCPIが、米連邦公開市場委員会(FOMC)の物価上昇に対する政策の転換点になると予想していた多くの金先物トレーダーにとって、衝撃を与える結果となった。
金は、米国債利回りの上昇とリスクオフの資本の流れに支えられた米ドルには敵わなかった。金先物相場は現在、6カ月連続の下落を記録しそうな勢いである。最も顕著な向かい風となったのは恐らく、米実質利回り(物価上昇を加味した米国債利回り)だろう。金は投資家に金利を支払わないため、この実質利回りの影響を強く受ける。米国時間13日朝、5年債の実質利回りが2018年以来初めて1%を超えて上昇したが、同時期の2018年後半に金先物相場は1,280前後で取引されていた。
金(XAU/USD) 週足チャート

資料:TradingView
1,700の水準を最後に割り込んだのは2021年まで遡るため、今回この水準を割り込むと、注目すべき事象となる。金トレーダーはトレードを放棄し、8月の米CPI発表後はかなり可能性が低くなったと見られるFRBによる政策転換の可能性が出てくるまでは、下値を狙う展開となるかもしれない。その決意を固める後押しとなりそうな心理的水準が近づいている。
8月の米生産者物価指数(PPI)は、14日の米国市場寄り付き前に発表される予定だ。アナリストは、前月比0.1%低下と、7月(0.5%低下)からは低下幅が縮小すると予想している。食品とエネルギーを除いたコアPPIは同0.3%上昇と、7月(0.2%上昇)から上昇幅が拡大すると見られている。米CPI同様、8月PPIが予想を上回る結果となれば、FRBの利上げ観測が高まり、米国債利回りは上昇するだろう。そうなれば、金のファンダメンタル価値は下がり、金先物は2020年初頭以来の水準まで売られる展開もあり得る。

--- DailyFX.com アナリスト トーマス・ウェストウォーター著
ウェストウォーター氏に連絡するには、Twitter で @FxWestwater までお願いいたします。