金相場のファンダメンタルズ分析見通し:弱気
- 先週の金相場は、FRB高官のタカ派発言で米国債利回りが上昇したことを受け、下落
- FOMCを控えた沈黙期間により、市場は米経済指標に注目
- 金トレーダーは、米PMIと週間失業保険申請件数を注視



21日のニューヨーク金先物相場は、前週からの下落分の一部を取り戻し、週間のパフォーマンスは前の週比でプラスとなったが、月ベースでは依然として7カ月連続の下落となりそうな勢いである。先月に年初来安値を下回らなかったことは支えになるが、金利上昇を背景にファンダメンタルズの観点からは依然として弱気な見通しとなっている。債券市場に関しては、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策転換が具体的に見えてくるまでは弱気の見通しを継続するのが妥当だろう。トレーダーは来週、買いを手仕舞う動きに出るかもしれない。
米国債利回りが最高値を更新する中、金先物相場が9月の安値を上回る水準を維持していることは下支えとなるが、債券相場の下落は金相場にとって引き続き逆風となるだろう。政策金利の動向に敏感な米2年債利回りは先週、米連邦公開市場委員会(FOMC)高官がさらなる利上げの必要性を強調したため、4.6%台まで上昇した。FRBのリサ・クック理事は、インフレは依然として受け入れ難いほど執拗に高い水準にあると述べた。フェデラルファンド(FF)先物を見ると、市場は、11月2日のFOMCで75ベーシスポイント(bp)の利上げを実施する確率を100%、100bpの利上げの可能性を13%と見ている。
さらに、米経済指標からは、引き続き米雇用情勢の底堅さがうかがえ、金のトレーダーにとっては悲観的な見方につながっている。FRBがある程度、労働者数が減少することを望んでいるからだ。というのも、労働者数の減少が高止まりしているインフレを低下させるのに役立つはずだからである。10月15日までの1週間の米新規失業保険申請件数は21万4,000件となり、ブルームバーグのコンセンサス予想である23万件、前週の22万6,000件を共に下回る結果となった。



FRB高官からタカ派発言が相次いだ1週間が終わり、先週土曜からFOMCの沈黙期間が始まった。今週は、新規失業保険申請件数が発表されるほか、米S&Pグローバルが購買担当者景気指数(PMI)を発表する。アナリストは、10月の製造業PMIが52.0から51.0に低下し、サービス業PMIは49.4でほぼ横ばいになると予想している。積極的な利上げが続く中、米国の製造業は驚くほど堅調に推移している。
FRBによると、製造業の設備稼働率は2000年以来の高水準に達し、健全な需要を示唆している。つまり、製造業PMIは予想を上回る可能性がある。そうなれば、すでに高まっている利上げ観測がさらに強まる可能性が高い。このような状況下では、金相場は下落する可能性が高いが、最近 の急落を考えると、自律反発狙いの買いによる反発の可能性も否定できな い。ハト派的政策への転換が視野に入ってくるまでは、金売却の方向が得策かもしれない。
金価格と米2年債利回り - 日足チャート

資料: TradingView

--- DailyFX.com アナリスト トーマス・ウェストウォーター著
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