金相場のファンダメンタルズ分析見通し - 弱気
- 米インフレ率が予想を上回って上昇し、先週の金相場は3%下落
- FRBは、物価高の抑制策を強化する必要がありそうだ
- 米CPIが高騰する中、金/ドルは、引き続きファンダメンタルズ的に下落傾向にある



先週の金先物相場は約3%下落。今年初めから重しとなっているファンダメンタルズ要因を背景に売りに押された。米2年債利回りは一時、2007年8月以来となる4.5%に達した。ドルも過去5営業日を通して高値を目指す展開となった。
米国債利回りとドルの両方が同じ方向に動くと、金相場に大きな影響を与えることがある。金/ドルには、予想期待価格以外に、資産の保有に付随する利子がない。債券は利息を得ることができ、特定の株式は配当を得ることができる。為替取引でも、金利の低い通貨で資金調達し、金利の高い通貨で運用して利ザヤを稼ぐ手法、いわゆるキャリートレードがある。
つまり、金利が上昇すると、金相場には不利になる傾向がある(金利の低下は金相場に有利に働きやすい)。金相場は世界中で主にドル建てで取引されているため、ドル高が金相場の軟化をさらに際立たせている。インフレヘッジを求めて金を購入したトレーダーの多くは不意を突かれたかもしれない。ここ数十年で最も高いインフレ率となっているにもかかわらず、金相場は史上最高値から20%も下落している。
インフレと言えば、先週発表された米消費者物価指数(CPI)は重要な結果をもたらした。9月の米CPI、コアCPIは共に予想を上回って上昇した。これは米連邦準備制度理事会(FRB)にとっては好ましくない結果で、FRBはインフレ率を目標値まで引き下げるために、より一層の引き締めに動く必要がありそうだ。10月初旬以降、市場では2023年に50ベーシスポイントの利上げ実施を予想する見方が増えている。
このことを鑑みつつ、ファンダメンタルズの原則を考慮すると、今週は金相場にとって厳しい状況が続くと思われる。米国では企業決算を除けば、注目度の高い経済指標の発表など特に目立ったイベントはない。しかし、英国やカナダからはインフレ指標が発表され、ユーロ圏の消費者物価指数の発表も予定されている。これらが強い内容となれば、世界的な金融引き締めの動きは強まり、金相場を弱めるだろう。



金相場のファンダメンタルズ要因

資料:TradingView
--- DailyFX.com ストラテジスト ダニエル・ドゥブロスキー著
ドゥブロスキー氏に連絡するには、Twitter で @ddubrovskyFX までお願いいたします。