※2023年6月28日15時41分更新
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- 金は、ドルが方向感に欠ける中、直近の安値圏で推移
- 市場期待インフレ率は、高いサービス価格に対して、エネルギー価格の下落を示唆している
- パウエルFRB議長の講演が今夜(日本時間午後10時半)予定されている。議長の発言は金/ドルに打撃を与えるか?



ジェローム・パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を今夜(日本時間午後10時半)に控える中、28日の金先物相場は3カ月ぶりの安値圏で推移している。
パウエル議長は、ポルトガルのシントラで開催される欧州中央銀行(ECB)フォーラムに出席し、他の中央銀行総裁らとともに政策についてパネルディスカッションを行う。
先週開催された6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合でFRBは利上げを見送ったが、パウエル議長は改めて引き締めの必要性を強調した。タカ派的なバイアスが維持されたことで、市場は近い将来、利下げの可能性があると期待した。
ただ、そのような見方は打ち砕かれ、金利市場は現在、2024年初頭が金融緩和政策に転じる最も早い時期と見ている。
資料:ブルームバーグ、tastylive
FRBの金利動向に対する市場の認識が再調整されたため、ドルは先週末にかけて顕著な上昇を見せたが、今週は多くの通貨に対してレンジ取引や横ばいの動きとなっている。
インフレ期待は再加速しており、1年物の米ドル・インフレ・スワップは直近でわずかに上昇している。
2年物のブレイクイーブン・インフレ率は、2023年前半の金融緩和の後は、横ばいで推移している。ブレイクイーブン・インフレ率とは、米物価連動国債(TIPS)から導き出される市場が推測する期待インフレ率のことである。
資料:ブルームバーグ、tastylive
インフレが今後も高止まりする可能性があると市場が認識している根拠は、消費者物価指数(CPI)の内訳にあるかもしれない。
とりわけ、CPI総合指数に含まれるエネルギー価格の影響を注視すると、スワップ市場だけでなくFRBも懸念を抱いている可能性が垣間見える。
資料:ブルームバーグ、tastylive
ロシアはウクライナ紛争に資金を投入するため、石油輸出を増やしている。ロシアがサウジアラビアを抜いて、中国へのエネルギー供給量が第1位になったと今週報じられた。
米CPI総合指数は低下傾向にあるが、エネルギー価格低下の影響を受ければ、それも短期間で終わるかもしれない。
FRBは、サービス価格に根強い価格上昇圧力が残っていることを挙げており、この部門の経済は、引き締め政策にもかかわらず、労働市場の力強さによって需給のひっ迫が続いているようだ。
7月12日に発表される米CPIは、7月26日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合に向けたFRBの姿勢を見極める手がかりとして注目される。
金相場にとって、インフレ見通しの重要な要素は、米実質利回りがもたらす影響である。実質利回りとは、名目利回りから、同じ期間の米物価連動国債(TIPS)から得られる市場期待インフレ率を差し引いた利回りである。
CPIの上昇は、貴金属にとって諸刃の剣となる可能性がある。CPIが再び上昇に転じれば、FRBはより積極的な引き締め姿勢に転じざるを得なくなり、ドルの支援材料になる可能性が高い。
しかし、インフレ期待が高まることによって実質利回りが低下し、金が魅力的な資産となる可能性も排除できない。
このような結果を左右する鍵は、米国債利回りの反応である。米国債利回りの方が市場期待インフレ率よりも上昇ピッチが早ければ、実質利回りがわずかに上昇し、金価格を押し下げるかもしれない。
GC1(期先の金先物)、米10年物実質利回り、ドル指数
資料:TradingView
--- DailyFX.com ストラテジスト ダニエル・マッカーシー著
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