金相場のファンダメンタルズ見通し - やや強気



金先物相場は先週、10月の米インフレ指標(消費者物価指数)が発表された直後に急上昇した。先週金曜の取引時間終了時点で金相場は、週間ベースで約5.1%の上昇となった。これは2020年3月以来最大の上昇幅である。金/ドルは、ドルと米国債利回りの動向に非常に敏感に反応する。ドル、米国債利回りともにインフレ指標発表後は大きく下落した(下図参照)。
10月の米消費者物価指数(CPI)の伸び率は前年同月比7.7%と、予想(同7.9%)に反して軟化した。コア指数も同6.3%と、事前予想(同6.6%)よりも伸びが鈍化した。食品とエネルギー価格の下落がこの結果に寄与している。興味深いことに、住宅関連費用の上昇は依然として続いているため、CPIとコアCPIの差はさらに縮小した。
米CPIに対する金相場の反応

資料:TradingView
なぜ金はこれほど力強く上昇したのか。下図を見てみると、市場は、2023年における米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派度合いを大きく引き下げた。実際、約50ベーシスポイント(bp)の利上げを予想する見方はほぼなくなった。したがって、米ドルが米国債利回りとともに下落したのは驚くべきことではない。市場は明らかに、FRBが積極的なタカ派姿勢を維持しなくなることを織り込んでおり、それが結果的に金相場を押し上げることになった。
このことを考慮すると、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合での75bpの利上げ実施は、ほぼ間違いなく見送られるだろう。市場は50bpの利上げを視野に入れている。FRB高官 の発言に関しては、インフレ指標発表後、一部の政策担当者は慎重な姿勢を崩していない。しかし、高官らの発言は引き締めのペースと、どの程度の利上げが必要かにシフトしているようだ。
今後1週間の米国経済指標におけるイベントリスクとしては、15日(日本時間午後10時半)に卸売物価のインフレ率を測る生産者物価指数物(PPI)、16日(日本時間午後10時半)に小売売上高が発表される。市場はまだ不安定な状況にあることを忘れてはならない。今後数日間に発表される経済指標が依然として好調であれば、市場がインフレ指標に過剰反応したとの見方が強まる可能性は否定できない。
金トレーダーは、FRBの金融政策の方向性を見極めるため、インフレ指標発表後にFRB高官の発言がどのように変化するかに注目している。ジョン・ウィリアムズ氏、クリストファー・ウォーラー氏、ジェームズ・ブラード氏を始めとするFRB高官らが今週発言する予定である。DailyFXの経済指標カレンダーを確認して、FRB高官による講演などの情報を常時入手されたい。このことを考えると、今後1週間は、FRB高官がこれまで通り慎重な姿勢を示せば、金相場はさらに上昇する可能性がある。



2023年のFRB金利予想

資料:TradingView
--- DailyFX.com ストラテジスト ダニエル・ドゥブロスキー著
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