※2023年6月1日15時21分更新
金、金/ドル、米国債利回り、ドル、米債務上限、FRB、中国PMI - トーキングポイント
- ドルに下落圧力がかかる中、金価格は反発している
- FRBの動向に注目が集まる中、今週の米国債利回りは上値が重い
- 米債務上限を巡る合意案を議会が承認すれば、金/ドルはさらに上昇するか?



今週の金先物相場はこれまでのところ、底堅く推移している。ドルは最近の上昇が一服し、先月末に上昇した米国債利回りは低下しているため、資金の一部が金に向かっている。
コモディティ市場の動きはまちまち。今週発表の経済指標は振るわず、世界の経済成長見通しが不透明になったことを受け、いくつかの工業用金属資産は逆風に直面している。
ベースメタル(非鉄金属)は、景気拡大のために大量に必要となるが、31日発表の中国購買担当者指数(PMI)が軟化したことが懸念材料となっている。
しかし、財新/S&Pグローバルがきょう1日に発表した 5月の中国製造業PMIは50.9と、予想および前月の数値である49.5から改善した。財新PMIは比較的小規模な企業を対象とした民間調査で、中国国家統計局が公表するPMIよりもサンプル数が少ないとされている。最新の経済指標はすべて、DailFX.comの経済指標カレンダーでご覧いただけます。
しかし、金と銀の両相場にとっては、米国債利回りの低下が下支えとなっているようだ。
米国債利回りはイールドカーブほぼ全体で、シリコンバレー銀行の破綻をきっかけに米地銀危機の懸念が高まり始めた3月上旬の水準に戻りつつある。
短期金利の指標となる米2年債の利回りは、今月初めに3.66%まで低下した後、先週金曜には4.63%まで戻った。きょう1日は4.40%付近で取引されている。
数日のうちに、米債務上限を巡る合意案は米議会で可決され、デフォルト(債務不履行)は回避されると見られている。この合意案は米国時間31日深夜に下院で可決されており、あとは議会での承認が必要となる。
この法案が無事可決されれば、市場の関心は再び、米連邦準備制度理事会(FRB)の動向とその金融政策に対する思惑に移るかもしれない。
複数のFRB当局者の発言からは、6月14日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利上げは見送るというメッセージがうかがえる。
フィラデルフィア地区連銀のパトリック・ハーカー総裁とフィリップ・ジェファーソンFRB理事は共に31日、FRBは次回の会合で政策金利を据え置くべきだとの見解を示した。
金利市場は、6月の利上げの可能性はほとんどないと見ているが、7月の会合では25ベーシスポイントの引き上げ実施の確率を80%程度としている。
米国金利の行方がやや不透明であり、米債券市場は今後さらに上下に振れる可能性が否定できない。このため、ドルの動きも不安定になるかもしれず、その結果、金相場はこれらの要因に左右される動きを見せる可能性がある。



GC1(金の短期先物取引)のテクニカル分析
金相場は、昨年11月を始点とする上昇トレンドチャネル内にとどまっており、今週初めには、そのチャネルの下限を試したが、サポートエリアは維持された。
この上昇トレンドラインは、2つの過去の安値と100日単純移動平均線(SMA)と重なっている。このゾーンは、現在1,936-1,945のエリアで、引き続きサポートとなりそうだ。
これらのサポート水準を割り込むと弱気な展開になる可能性があり、その場合、次に注目すべきサポートゾーンは1,811と1,813のダブルボトムになりそうだ。200日SMAと260日SMAは現在、これらの水準のすぐ上に位置しており、サポートとして機能する可能性がある。
5月初旬の高値2,085は、2022年3月の高値2,079を上回ったが、史上最高値2,089は超えなかった。ダブルトップ形成後に上値が切り上がらなかったため、トリプルトップが示現した格好だ。
このため、2,080-2,090のエリアがレジスタンスゾーンとなる可能性があるが、この水準を上回れば、強気の展開となるかもしれない。次のレジスタンス水準は、現在2,160付近に位置している上昇トレンドチャネルラインの上限になる可能性がある。
資料:TradingView
--- DailyFX.com ストラテジスト ダニエル・マッカーシー著
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