※2023年7月19日17時11分更新
金、金/ドル - 値動きと見通し
- 米6月小売売上高が予想を下回る伸びとなり、金/ドルは急上昇
- 金相場は強気の逆ヘッドアンドショルダーパターンが目標価格に到達
- 金相場の次なる展開と、金/ドルの注目すべき重要な水準とは?

6月の米小売売上高の伸びが予想以上に鈍化し、米国債利回りとドル相場の重しとなったことを受け、金先物相場は上昇した。
米小売売上高は予想を下回ったものの、労働市場のひっ迫を背景に個人消費には底堅さがうかがえる。先立って発表された米消費者物価指数(CPI)と米生産者物価指数(PPI)は軟調な内容で、小売売上高はまちまちの結果となった。しかし、エコノミックサプライズ指数が示すように、広範な経済指標は引き続き堅調で、同指数は今月初めに2年ぶりの高水準を付け、その後はわずかに低下している。
米連邦準備銀行(FRB)が引き締めサイクルの終了を間近に控えているとの見方が強まるなか、依然として経済の底堅さを見せたとはいえ、インフレ率や小売売上高は伸びが鈍化した。ドル相場がこれに大きく反応したことは、市場がドル買いムードにはないことを示唆している。
CMEグループのフェドウォッチによると、金利先物市場は7月25-26日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で25ベーシスポイントの利上げ実施の可能性を99%と見ている。しかし、市場は2024年半ば頃から利下げに転じると想定しており、来年末までに5回近い利下げを実施すると予想している。FRBが年内に2回の利上げ、2025年まで利下げなしと予想しているのとは対照的だ。
金/ドル 240分足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
米インフレ指標で物価上昇圧力が緩やかになっていることが確認されたため、米物価連動国債(TIPS)10年物は、先週から急反落している。金相場が反発すると、実質利回り(インフレ調整後)は低下するという反比例の動きとなる傾向がある。機会費用(実質利回り)の上昇は、金の魅力を低下させる傾向がある。
金/ドル 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
テクニカルチャートでは、金/ドルは、先週示現した小型の逆ヘッドアンドショルダーパターンの価格目標を達成した(7月13日付記事「金価格見通し:米CPI受け上昇、金/ドルでは逆ヘッドアンドショルダーが示現」参照)。左肩は6月下旬の安値、頭部は6月末の安値、右肩は7月上旬の安で、このチャートパターンの目標価格は1,980前後である。
センチメントの観点からは、最近ロングポジションは一部縮小しているものの、金を取引する個人トレーダーの約60%はネットロング(金の買い持ち)を維持しているとIGクライアントセンチメント(IGCS)が示している。
金/ドルは現在、日足チャートの一目均衡表の雲上限(現在は1,998前後)をわずかに下回る水準に位置する6月初旬の高値1,983という堅いレジスタンスを試している。日中チャートでは、モメンタムと当面のトレンドは明らかに上向きに転じている(特に、240分足チャートの右肩上がりの89期間移動平均線に注目)。それでも、中期的な下落圧力が弱まるには、金相場は1,983-1,998を突破する必要がある。



--- DailyFX.com ストラテジスト マニッシュ・ジャラディ著
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