ビットコイン業界と米国証券取引委員会(SEC)の対立が鮮明であるが、ビットコインETFのローンチに近付いた。ビットコイン、「デジタルゴールド」と金、「リアルゴールド」との連動が高まっている。このような中、金とビットコイン価格の今後の見通しとは



サマリー
- 米国発の現物型ビットコインETFの可能性高まる
- 金とビットコインの関係
- 金&ビットコイン価格の今後の見通し
ビットコインETFローンチに向けた一歩
米国発の現物型ビットコインETF(上場投資信託)のローンチに向け大きな前進が見られた。米国証券取引委員会(SEC)は米資産運用会社グレースケール・インベストメンツが運用する世界最大のビットコインファンドをETFに転換する申請を退ける決定を下していた。しかしながら、ワシントンの連邦高裁は、SECの決定を覆したことから、ビットコインETFのローンチの可能性が高まった。ただし、SECは連邦高裁の判断を不服として上訴する可能性は残っている。SECは暗号資産業者を相次いで提訴するなど、暗号資産業者とSECの対決が鮮明になっているが、今回の連邦高裁の判断は暗号資産市場にとって大きな勝利と受け止められ、ビットコイン価格は大幅上昇した。
リアルゴールド VS デジタルゴールド
ビットコインは「デジタルゴールド」になる可能性がある資産と言われている。ビットコインは発行上限が設定されており、「リアルゴールド」、金と同様に希少性があることが背景にある。また、金と同様にインフレヘッジとして購入する投資家がいることなどから、金(リアルゴールド)と類似したものになる可能性を秘めていることが背景にある。そのため、金とビットコインの値動きは連動する傾向がある。

資料:Trading Economics。2022年末を100として指数化。米ドル建。ビットコインは左軸、金は右軸。
しかしながら、金と比べて流動性が低いことやSECとの対決でみられるように規制などの課題も多くあり、ビットコインが金と同じような貴金属になるためのハードルは依然として高い。
金とビットコイン価格は連動する傾向があるものの、金と比べてビットコインは暗号資産固有のニュースの影響を強く受ける。ビットコインETFローンチの可能性が高まったことはビットコイン価格にプラスに働いたものの、暗号資産固有のネガティブなニュースが広まった際はビットコインが下落することが見込まれる。
そのため、ビットコインと同様の価格変動、上昇を享受しつつも、暗号資産固有のイベントによる価格変動を避ける手段として「リアルゴールド」、金が選択肢の一つになろう。
今後も固有のニュースによりビットコイン価格は変動しよう。しかしながら、固有のニュースに加え、金、ビットコイン価格ともに、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ終了が近付く中、今まで以上に米国景気、雇用、インフレ動向に強く影響を受けよう。今週は米国PCE物価指数、そして最重要指標である米国雇用統計が発表される。
金価格見通し



テクニカル面では金の強気シグナルが点灯しつつある。金価格は、日足チャートで、9日指数移動平均線が200日指数移動平均線を上抜ける強気の「ゴールデンクロス」が成立している。また、MACDでも強気の「ゴールデンクロス」が成立しているほか、RSIは50を超え、金価格の強気モメンタムへの転換を示している。
更に、金価格の重荷となってきたFRBの利上げ終了が近付く中、金価格の上昇継続を見込む。5月4日を起点とした右肩下がりのレジスタンスライン近辺かつ、2月から5月にかけての金価格の上昇の半値戻しの水準:1943ドル(1トロイオンス当たり)の上方ブレイクが視野に入る。ブレイクすると、金価格の上昇トレンドが一段と鮮明になる可能性がある。
一方、リスクシナリオとして、米国雇用統計で労働市場の堅調さが示され、FRBの利上げ終了が遠のいたとの観測が高まった際は、米国金利上昇を通して金価格が下落する可能性がある。金利が付かない金は、米国金利上昇局面で相対的な魅力度が低下し、金価格が下落する傾向がある。
米国金利が上昇した局面で、金価格が心理的節目である1,900ドルでサポートされるかに注目。サポートされた場合、金価格の上昇地合いが強まっていることを投資家に印象付けよう。
金価格(XAU/USD)日足チャート

資料:Trading View



ビットコイン価格見通し
ビットコイン価格(BTCUSD)は、3万ドルを突破後反落したものの、水平サポートラインが機能し、終値ベースで25,800ドルが維持されていた。今後もビットコイン、暗号資産固有のニュースは価格の変動要因になるものの、テクニカル面では強気転換を示唆するシグナルが出ている。
RSIは50を超え、ビットコイン価格に対して強気モメンタムに転換したことを示している。また、MACDラインがシグナルラインを上抜ける強気の「ゴールデンクロス」が示現している。
米国雇用統計で労働市場が軟化を示した場合、FRBの利上げ終了が近付いたとの思惑から、8月8日から8月22日のビットコイン価格の値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント61.8%水準28,353ドルへの上昇が視野に入る。
一方、暗号資産市場にとってネガティブなニュースが出た場合や米国雇用統計が強い結果となった場合、フィボナッチ38.2%水準27,207ドルがサポートラインとして機能するかに注目。サポートされた場合、ビットコイン価格の地合いが強まりつつあることを投資家に印象付けよう。
ビットコイン価格(BTCUSD)日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著