米ドル/南アフリカランドの売り取引
南アフリカランドは2023年で最もパフォーマンスが悪い通貨の1つであるが、6月上旬には米ドル/南アフリカランドが史上最高値を更新した。この値動きの要因は、南アフリカランドのトレーダーにとっては全く経験したことがないわけではなく、政治的・経済的な逆風が絶えず続いていることに加え、外部のリスクセンチメントと米ドルが挙げられる。



南アフリカランドのファンダメンタルズ
電力不足や汚職などの根強い問題が依然として現地通貨の障害となっているが、最近は停電の頻度が減り、深刻さが低下していることから、短期的には楽観的な見方が広がっている。この状況が続くかどうかはまだ判断できないが、現状、企業活動は投資家心理とともに上向いている。新しい要因としては、南アフリカとロシアの関係や、ウラジーミル・プーチン大統領が南アフリカに足を踏み入れた場合に逮捕するのかどうかが挙げられる。多くの西欧諸国は、すでに脆弱な経済に打撃を与える可能性のある制裁をちらつかせて、南アフリカを非難しており、今後の動向を注視するうえで重要なポイントとなっている。
世界の通貨の対米ドル為替レート
出所:トムソン・ロイター、チャート作成:ウォーレン・ベンケタス
SARB(南アフリカ準備銀行)においては、通貨防衛のために積極的に金利を引き上げてきた。これは、SARBの主要な機能の1つである。これらの措置により、南アフリカランドに対するキャリートレード(低金利の通貨で調達した資金を高金利の通貨に換えて資産運用し、運用益に加えて金利の利ザヤを稼ぐ取引のこと)の魅力が高まり、外国人投資家にとって新たな好材料となったため、第3四半期に上昇する可能性がある。
最近は、金、プラチナ、石炭、鉄鉱石などの主要な南アフリカのコモディティ価格が下落している。しかし、PBOC(中国人民銀行)の利下げを通じた景気刺激が中国経済の回復に対する楽観的な見方につながることから、中国の景気回復がコモディティ需要を押し上げ、結果的に南アフリカランドが上昇する可能性がある。
2023年第3四半期の米ドルの見通し
南アフリカランドを分析するためには、米ドルが重要な役割を果たす。FRB(米連邦準備制度理事会)が最近、利上げサイクルを一時停止したことで、米ドルはピークに達しつつあると考えられる。ジェローム・パウエルFRB議長は、将来的に利上げの可能性を残しているものの、経済指標次第では予想よりも利上げが進まないかもしれない。また、労働市場に亀裂が生じ始めており、インフレ率が(意図したよりは緩やかではあるが)着実に低下していることから、これが継続すれば、南アフリカランドの強気筋に有利に働く可能性がある。



テクニカル分析による米ドル/南アフリカランドの見通し
米ドル/南アフリカランド 月足チャート

出所:TradingView、チャート作成:ウォーレン・ベンケタス
上記の米ドル/南アフリカランドの月足チャートは、2023年の急激な上昇と、トレンドラインのサポート(黒)による強い上昇を示している。価格は50日移動平均線と200日移動平均線を上回って推移しているため、モメンタムは依然として強気筋に有利である。ただし、月足の値動きとRSI(相対力指数)を比較すると、弱気のダイバージェンスと呼ばれる明確な乖離を確認できる。タイミングは定かではないが、一般的に、その後の下落局面を示唆している可能性がある。
米ドル/南アフリカランド 日足チャート

出所:TradingView、チャート作成:ウォーレン・ベンケタス
日足チャートでは、200日移動平均線(青)と連動している長期的なトレンドラインのサポートが重要であることが確認できる。この2つの主要なサポートゾーンを割り込むと、18.0000の水準を試す動きが出てくる可能性があり、それが実現すれば弱気バイアスが強まるだろう。強気の見方では、この転換点での反発が見られた場合、2023年初めに見られたような上昇トレンドの再開を示している可能性がある。最終的には、上記のファンダメンタルズ要因が第3四半期の値動きに影響を及ぼすだろう。
主要なレジスタンスレベル:
- 19.0000
- 18.7167/50日移動平均線(黄)
- 18.5000
主要なサポートレベル:
- 18.2500
- トレンドラインによるサポート/200日移動平均線(青)
- 18.0000