OPECプラスの減産により原油需要は増加すると予測される
原油価格は2023年に入って下落傾向にあり、さまざまなファンダメンタルズ要因が取引全体に影響を及ぼしている。OPECプラスは最近、原油価格を押し上げるために減産を実施するなど、再び注目を集めている。OPECプラスの行動は、原油価格を下落させる程度には下限があるという姿勢を浮き彫りにしており、トレーダーに対しても原油価格に対する下支えの姿勢を示した。OPECプラスの加盟国は2023年6月、2024年末までの減産に合意しており、2023年第3四半期には強気のバイアスが生じる可能性が高い。OPECの世界石油需要見通し(下表参照)によると、第3四半期はOECDと非OECD地域の両方でわずかに上昇すると予測されている。
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OPEC 世界石油需要予測
出所:OPEC
中国の原油需要が多い要因とは
新型コロナウイルスに関する規制が解除された後に中国の経済活動は再開したが、予想していたほど堅調ではなく、これは最近の経済指標からも明らかである。ただし、インフレ圧力が比較的低く、中国人民銀行が景気刺激策のために利下げを実施していることはポジティブな要因と言える。これらの要因は年間を通じて続く可能性が高く、商品価格が上昇する余地が残されている。しかし、ゴールドマン・サックスを含む主要金融機関は、中国経済の見通しを下方修正した。市場は、中国の景気回復を楽観視するには最近の利下げ(0.1%)の後もさらなる利下げが必要だと考えている。今後の製造業、輸出、住宅、小売売上高などの主要指標に関して、好転の兆候がないかが注目されるだろう。
トレードの基礎知識
コモディティ取引
推薦者: Warren Venketas
米ドルの動向は?原油価格にどう影響するか
米国の政策金利がピークに近づく中、原油と米ドルにおける従来の逆相関関係が重要になる可能性がある。FRB(米連邦準備制度理事会)のガイダンスと金融市場の予想には隔たりがあるが、市場は利上げサイクルのターミナルレート(金融引締めサイクルにおける利上げの最終着地点)が近いことを想定している。コアインフレ率が予想を上回って推移しているのにもかかわらず、最近は総合インフレ率が低下する傾向にあるが、一部のFRB当局者は現在、より慎重な金融政策を支持しており、それが原油価格を支える可能性がある。
現在の金利予測では0.25%の追加利上げが予想されているが、FRBの政策決定において米国の経済指標が重要視されており、結果が悪い場合は利上げの可能性がなくなるかもしれない。
FF金利の予測
出所:Refinitiv、チャート作成:ウォーレン・ベンケタス
原油価格を下支えする2つの要因
1) 天候
米国、欧州、アジアは夏季に入り、一般的に消費量が増加するにつれて原油需要も増加する。より多くのエネルギーが必要になり、OPECプラスの原油供給が減少するにつれて冷房の利用量が増加する傾向があり、需要増加と供給減少が原油価格を押し上げる可能性がある。
2) ハリケーンの季節
夏季に入るのに加えて、メキシコ湾地域では第3四半期に毎年ハリケーンの季節に直面することで供給が滞り、原油価格の上昇が引き起こされる可能性がある。
原油価格の3つの潜在的リスク
1) 中央銀行
世界の中央銀行が積極的な金融政策を維持し、個人消費や商品、サービスの需要を抑制することで、タカ派姿勢が継続されれば原油需要は減少し、価格が上振れする余地はほとんどなくなる可能性がある。
2) ロシア
ウクライナ戦争で財源が枯渇する中、ロシアがOPECプラスの構成国であることが注目されている。ロシアは戦争の関連費用に加えて、通常の経済活動に資金を提供するために高水準の原油輸出を維持する必要があり、サウジアラビアとロシアは主要な目的に関して対立している。今後の関係を注視する必要はあるが、現状は友好的であるようだ。
3) 景気後退
景気後退への懸念は、世界中のアナリストによってよく言及されているが、第3四半期に関してはまだ訪れないかもしれない。ただし、グローバルマーケットが銀行危機を回避し、米国経済が回復の兆しを見せた後、景気後退が第4四半期以降に影響してくる可能性がある。