ユーロ/米ドル トーキングポイント
ユーロ/米ドルは年初来安値(0.9952)からの反発により、パリティを上回る水準で取引されているが、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を一段と引き締める意欲を示しており、米国時間15日に発表を控える米小売売上高の内容次第では、ユーロの足を引っ張る可能性がある。
FRBによる一段の金融引き締め警戒で、ユーロ/米ドルは好調な米小売売上高を売り材料視
ユーロ/米ドルは、中立金利を上回る引き締めも辞さない意向を示すFRB高官が増えても、2002年12月の安値(0.9859)を上回る水準を何とか維持しているが、相対力指数(RSI)が売られすぎの領域にあるため、ユーロの弱気なモメンタムは持続するように見える。

また、まもなく発表となる6月の米小売売上高は前月比0.8%増と予想されており、同0.3%減だった5月から改善する内容となれば、ユーロを対米ドルで下押しする可能性がある。FRBのクリストファー・ウォーラー理事は「金融引き締め政策を実施するためにはFF金利の誘導目標レンジをさらに引き上げる必要がある」と主張しており、個人消費の伸びが確認されれば、米連邦公開市場委員会(FOMC)でのフォワードガイダンス(将来の金融政策を前もって表明すること)の変更を促す可能性がある。
結果的にユーロ/米ドル相場は、7月21日の欧州中央銀行(ECB)理事会を前に、逆風にさらされそうである。ECBは50ベーシスポイント(bps)の利上げに動くと見られているが、欧米では金融政策の正常化に向けたペースが異なり、FOMCが急ピッチの金融引き締めでインフレを抑え込もうとすれば、ユーロには引き続き下落圧力がかかる可能性がある。
次に、ユーロ/米ドルは、50日単純移動平均線(1.0483)の下降ラインに沿って推移しており、年初来安値を更新する可能性があるが、2022年の大半のユーロ/米ドル取引において、個人トレーダーはネットロング(ユーロの買い持ち)となっていることから、弱気なセンチメントは継続するように見える。

IGクライアントセンチメント によると、現在74.13%のトレーダーがユーロ/米ドルをネットロング(ユーロの買い持ち)しており、トレーダーのロング/ショートの比率は2.87対1となっている。
ネットロングのトレーダー数は昨日より2.23%増加、先週より2.59%増加している一方で、ネットショートのトレーダー数は昨日より5.64%減少、先週より1.91%増加している。今週初めに72.80%のトレーダーがユーロ/米ドルをネットロングしていたため、ネットロング・ポジションが増加し、群集行動に拍車をかけた。一方、ネットショートのポジションが増加したのは、ユーロが米ドルに対し、年初来安値 (0.9952)まで下落したためである。
とはいえ、米小売売上高の内容が改善すれば、FRBが一段と金融政策を引き締めるとの観測が高まるため、ユーロ/米ドル相場の足を引っ張ることになりそうである。RSI(相対力指数)が30未満の水準を維持する限り、2002年12月の安値(0.9859)を試す展開となる可能性がある。



ユーロ/米ドル 日足チャート

Source: Trading View
ユーロ/米ドルは、RSI(相対力指数)が2022年で4回目の売られすぎの領域に位置し、年初来安値(0.9952)の水準で推移する中、安値圏で一連の高値・安値の更新を続けている。
RSIが30未満の水準を維持する限り、ユーロ/米ドルの弱い地合いは続くと見られ、0.9910(78.6%リトレースメント)から0.9950(50%エクスパンション)近辺のフィボナッチが重なる水準に接近、あるいは割り込めば、2002年12月安値(0.9859)を試す可能性が高まるだろう。
2002年10月安値(0.9685)を割り込んだ場合は、2002年9月安値(0.9608)に向かう展開となり、次の下値サポートとして0.9530(61.8%エクスパンション)付近の水準が意識されるだろう。



--- DailyFX.com 為替ストラテジスト デイビッド・ソン著
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