ECB理事会で利上げを実施したものの、ラガルド総裁は、次回会合での利上げは明言しなかった。ECBの利上げ継続に牽引されてきたユーロは、円、ドルに対して下落したが、EURUSD、EURJPY今後の見通しは?



サマリー
- ECB、今後の利上げは「データ」次第
- 高水準のEURロングポジション(EUR買い持ち)が解消される可能性
- ユーロ円は日銀会合が鍵を握る
ラガルド総裁、利上げは「データ」次第
米FRBに続き、欧州中央銀行(ECB)が金融政策決定会合(ECB理事会)を開催した。ECBは利上げを決定したものの、9月会合での利上げは「データ」次第とした。次回会合での利上げを明言しなかったことから、ユーロは円、ドル等主要通貨に対して下落した。

資料BloombergよりDailyFXが作成
高水準のEURロングポジションがEUR安要因に
米国では、来年初めからの利下げが織り込まれている。米国では、4-6月期のGDP成長率が公表され、前期を上回る力強い成長率を示した。パウエルFRB議長は年内の利下げを否定しているが、米国景気が底堅く推移する中、一段の利下げ織り込みの進展は進みづらいと見込む。
一方、ECB理事会を経て、ユーロ圏では次回会合での利上げ織り込みが若干低下したものの、金融市場では、年内あと1回の利上げが織り込まれている。景気減速懸念が一段と高まるにつれ、利上げ織り込みが剥落、ユーロ安要因となる可能性がある。また、ユーロはECBの利上げ継続スタンスに牽引され、ヘッジファンド等(投機筋)は、EUR通貨先物市場でロングポジション(EURの買い持ち)を積み上げている(EUR高要因)。次回9月のECB理事会での利上げ実施の不確実性が高まるにつれ、ロングポジションを解消し、EUR安要因になる可能性がある。

資料:BloombergよりDailyFXが作成。
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 2% | -19% | -6% |
週次 | -6% | 13% | 0% |
ユーロドル(EURUSD)見通し
MACDラインがシグナルラインを下回っており、ユーロ安ドル高トレンドであることを示唆している。また、水平サポートライン1.092ドルを下方ブレイク後、レジスタンス転換しており、ユーロの上値が重いことを示唆している。RSIも50を下回り、テクニカル面では、EUR安トレンドに転換したことを示唆している。
更に、米国では、景気が底堅く推移する中、来年初めからの利下げが織り込まれており、一段の利下げ織り込みの進展が見込みづらい。一方、ECBの利上げ継続スタンスに牽引されていたユーロは、次回会合以降の利上げが不透明な中、高水準のロングポジション(EURの買い持ち)の解消(EUR安要因)が進む可能性がある。ユーロドルは、5月末から7月18日までのユーロドルの値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント61.8%水準1.088レベルへの下落が視野に入る。
ユーロドル(EURUSD)日足チャート

資料:Trading View
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | -7% | -6% | -7% |
週次 | -13% | 2% | -2% |
ユーロ円(EURJPY)見通し
ユーロ円は、反転(EUR安JPY高)を示唆する「ダブルトップ」パターンが示現している。RSIも50を下回り、ユーロ安円高トレンドへの転換を示唆している。
テクニカル面では、EUR安JPY高シグナルが点灯しているが、本日の日銀決定会合の結果でユーロ安円高(日銀が政策修正した場合)、ユーロ高円安(日銀が政策を据え置いた場合)どちらの方向にも動くことを想定しておきたい。
日銀が政策修正した場合、5月2日高値151.61レベルでサポートされるかに注目。下方ブレイクした場合、ユーロ安円高トレンドが一段と鮮明になり、心理的節目である150.00レベルが視野に入る。
一方、日銀が金融政策を据え置いた場合、「ダブルトップ」パターンのネックラインである154.035レベルを上抜けるかに注目。上抜けた場合、ユーロ高円安トレンドに回帰した可能性が高まる。
ユーロ円(EURJPY)日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著