※2023年6月19日15時30分更新
ユーロ見通し:対ユーロ・英ポンド・豪ドル



欧州中央銀行(ECB)のタカ派的な利上げ、売られ過ぎの状況、ユーロ圏のマクロ経済指標が不調だったことを受け、ユーロが買われ、一部の通貨に対して最近の下落分を取り戻そうとしているように見える。しかし、ユーロの投機的なロングポジションは依然として高水準で、上値を抑える可能性がある。
ユーロは米ドルに対して反発したものの、豪ドルや英ポンドに対しては前回の記事で予想した通り、軟調な展開が続いている。5月30日付記事 「ユーロ相場見通し:ユーロ圏インフレ指標控えた対ドル・英ポンド・豪ドルの値動き」をご覧ください。
ECBは先週、25ベーシスポイントの利上げを実施し、預金金利は22年ぶりの高水準となった。ECBは、今後数カ月は利上げを継続する公算が大きいとの見通しも示した。また5月には金融引き締めが「力強く」経済に浸透していると言及し、引き締めサイクルは一時停止に近づいている可能性を印象づけた。ただ、クリスティーヌ・ラガルドECB総裁は「ECBにはまだカバーすべき領域がある」と述べており、ECBが利上げの手綱を緩める雰囲気ではないことを示している。
エコノミックサプライズ指数と為替のポジション状況
資料:ブルームバーグ
ユーロ圏のマクロ経済指標は、ユーロ圏のエコノミックサプライズ指数(ESI)に反映されているように、ここ数週間、不振が続いている。しかし、上図が示すように、この状態は平均回帰する傾向があり、ユーロ圏の経済指標が予想を下回る傾向がさらに続く可能性は低いと思われる。上振れする経済指標が発表されれば、ユーロを下支えする可能性がある。
とはいえ、最近の調整売りにもかかわらず、ユーロの投機的なロングポジションは、2020年以来の最高水準となっている。主要通貨の中でも高い水準にあり(上図参照)、この状況はしばらく続くことが予想される。
ユーロ/米ドル 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
ユーロ/米ドル:上値は限定的?
テクニカルチャートを見ると、ユーロ/米ドルは、200日移動平均線付近に位置する3月の安値1.0510という非常に強いサポートエリアから反発している。しかし価格は、日足チャート上の一目均衡表の雲上限(1.0970付近)にある強固なレジスタンスに直面している。また、より長期のチャートでは、14カ月RSI(相対力指数)が50-55付近で頭打ち状態になっており、自律反発の弊害となっている。
ユーロ/米ドル 月足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
以上のことから、ユーロ/米ドルは、新たなトレンドが発生する前に、2月以降のやや上向きなチャネル内でもう少しもみ合いが続きそうに見受けられる。1.0970の上には、5月の高値1.1100がレジスタンスとして控えている。一方、下降局面では、1.0550-1.0650がかなり強いサポートとなりそうだ。
ユーロ/英ポンド 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
ユーロ/英ポンド:小反発の可能性あり?
昨年12月の安値0.8545という重要な底値を試しているユーロ/英ポンドは、売られ過ぎの感がある。さらに、このユーロ/英ポンドは、水平チャネルの目標値を達成しており、短期的には小幅反発となる可能性を否定できない。ただ、このような反発となった場合、6月中旬の高値0.8620付近が上限となるかもしれない。一方、下降局面では、0.8545を決定的に下回ると、昨年8月の安値0.8340に向かって下落する可能性が見えてくる。
ユーロ/豪ドル 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
ユーロ/豪ドル:強いサポートに接近
ユーロ/豪ドルは、5月中旬の安値1.5850と重なる200日移動平均線というかなり強いサポートに近づいている。価格は売られ過ぎの状態に見え、小幅反発の可能性が高まっている。先週の高値1.6000を上回れば、5月中旬の安値1.6130に向かい上昇する可能性がある。



--- DailyFX.com ストラテジスト マニッシュ・ジャラディ著
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