※2023年5月30日17時56分更新
ドル、ユーロ、ユーロ/ドル、ユーロ/英ポンド、ユーロ/豪ドル – 見通し



ユーロ圏の重要なインフレ指標の発表を前に、ユーロは少なくともドルに対して少し売られ過ぎの感があり、小反発の可能性が出てきた。しかし、今月の下落のペースとその度合いを鑑みると、ユーロが持続的に上昇するのは厳しいように見える。
買われ過ぎの状態、ポジション状況、米利上げ観測が再び高まっていることをきっかけに、ドルに対して2カ月間続いたユーロの上昇は一服した。5月16日付記事「ユーロ見通し:どこまで下がる? 対ドル・英ポンド・円での値動き」をご参照ください。
エコノミックサプライズ指数と為替のポジション状況
資料:ブルームバーグ、作成:マニッシュ・ジャラディ
買われ過ぎの状況が反転した一方で、ポジション状況は変化していない。最近の下落にもかかわらず、ユーロの投機的なロングポジションは2020年以降、また主要通貨の中で(上図参照)最高水準となっており、ユーロの買い持ちが多い状況は続いている。
ユーロ/ドル 日足チャート
資料:TradingView、作成:マニッシュ・ジャラディ、下記の注意書き参照
マクロ経済的な観点からは、ユーロ圏の経済指標は振るわず、ユーロ相場にとってはさらなる重しとなっている。米国のエコノミックサプライズ指数(ESI)は最近、安定しているように見えるが、ユーロ圏のESIは引き続き低下している(上図参照)。市場で注目度が高いのは、31日に発表される独インフレ指標と1日発表のユーロ圏のインフレ指標、そして2日発表の米雇用統計だ。
ユーロ/ドル 週足チャート
資料:TradingView、作成:マニッシュ・ジャラディ
金融市場は、欧州中央銀行(ECB)が2回以上の利上げを実施すると予想しており、利上げサイクルの到達点(ピーク)を12月に先送りにしている。この点に関して、アイルランド中央銀行のガブリエル・マクルーフ総裁は先週、根強い高インフレ率を考慮すれば、ECBによる今年2回以上の利上げ実施は可能であると述べた。一方、CMEグループのフェドウォッチによると、6月の金融政策決定会合で米連邦準備制度理事会(FRB)が25ベーシスポイントの利上げに動く確率は、1週間前の25%から63%に引き上がったという。
ユーロ/ドル 日足チャート
資料:TradingView、作成:マニッシュ・ジャラディ
ユーロ/ドル:短期トレンドは下向き
トレンド/モメンタム指標に基づき色分けされた240分ローソク足チャートが示すように、ユーロ/ドルは弱気局面にある。しかし日足チャートでは、ユーロ/ドルは2022年後半に始まった強気トレンドの中でもみ合い局面に移行している。このリスクについては、筆者は5月上旬の記事(英語のみ)で指摘している。
ユーロ/ドルが日足チャート上で一目均衡表の雲下端を下回ったことは、短期的に上昇の勢いがやや弱まったことを示している。200日移動平均線付近に位置する3月安値1.0510が強いサポートとなる可能性がある。この移動平均線は、現在の下降トレンドを抑え込む役割を果たすかもしれない。上昇局面では、5月中旬の高値1.0900が強固なレジスタンスとなる可能性がある。
ユーロ/英ポンド 日足チャート
資料:TradingView、作成:マニッシュ・ジャラディ
ユーロ/英ポンド:大局的な下降トレンドは継続
下降トレンドの一服は、ユーロ/英ポンドのトレンドが反転するというよりも、下落ペースの鈍化を示しているのかもしれない。直近のレジスタンス0.8750を上回らない限り、弱気な見通しが転換することはないだろう。それまでは、昨年12月の安値0.8545を目指して下降する可能性が残る。
ユーロ/豪ドル 日足チャート
資料:TradingView、作成:マニッシュ・ジャラディ
ユーロ/豪ドル:今のところ上値は限定的
ユーロ/豪ドルは、1.5950-1.6050のエリア(昨年12月の高値と89日移動平均線を含む)を再び試すリスクを抱えている。これは先月、2020年10月の高値1.6825という厳しいレジスタンスから後退した流れを引き継いでいる。より詳しい内容は、5月9日付記事「豪ドル見通し:豪予算案公表控え、対米ドル・円・ユーロでの値動き」をご参照ください。
このチャートでは、青いローソク足は強気が優勢な局面、赤いローソク足は弱気が優勢な局面を示しています。黒いローソク足はもみ合い局面を表していますが、時にはトレンドの終焉を形成することもあります。
注:ローソクの色は予測ではなく、単にその時のトレンドを示しています。実際、ローソクの色は次のローソクの際に変化することがあります。200期間移動平均線付近やサポート/レジスタンス付近、もみ合い/不安定な値動きの際は、本来のトレンドとは異なる、騙しのパターンが発生する可能性もあります。筆者は情報の正確さを保証しかねます。また、過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスを示唆するものではありません。本情報のご利用は、自己責任にてお願いします。
--- DailyFX.com ストラテジスト マニッシュ・ジャラディ著
ジャラディ氏に連絡するには、Twitterで @JaradiManish までお願いいたします。