ファンダメンタルズ分析による第3四半期の米国株の見通し:取り残される不安が高まり上昇トレンドは堅調に
米国株は楽観論による盛り上がりで大幅に上昇する可能性
米国の債務上限引き上げによる全体的なセンチメントの改善や、銀行システムにおけるストレスの軽減、米国経済の回復力、そして世界の金利がピークに達しつつあるという期待によって、米国株は第3四半期に大幅に上昇する可能性がある。
米国が壊滅的なデフォルトを回避し、地域銀行の破綻による影響も限定的であったことなど不確実性が一巡したことは、S&P500のコールオプションに対する需要の急増(一般的に強気の見方を示す)に反映されているように、センチメントの大幅な好転をもたらした。
センチメントの大幅な好転
出所:Bloomberg、チャート作成:マニッシュ・ジャラディ
経済成長と株価収益率は底堅い
さらに、経済成長の減速は製造業部門で顕著にみられる。サービス部門は予想外に回復力があり、ハードランディングのテールリスクはある程度軽減されている。しかし、2023年における経済評価の上方修正や、金融環境の引き締まりを受けた2024年における経済成長見通しの下方修正に反映されているように、コンセンサス予想では米国の緩やかな景気後退を示しているようだ。
物価上昇圧力は最近数ヶ月で和らいだが、緩やかなペースにとどまり、中央銀行の目標値を大幅に上回っている。FRB(米連邦準備制度理事会)は、インフレ率の低下ペースが鈍化していることを踏まえ、2023年に2回の追加利上げを予想しており、利下げは数年先になるとみている。これに対してマーケットは、2023年内に利上げが1回実施される可能性すら絶対ではないとみており、早ければ2024年にも利下げが開始されると予測している。
経済成長の見通し・インフレ率の動向チャート
出所:Bloomberg、チャート作成:マニッシュ・ジャラディ
マーケットのハト派的な見方は、FRBのインフレ見通しが実際のインフレ率を上回っており、生産者物価上昇率と輸入物価は、すでに経済活動の軟化を示しているとの認識にもとづいているようだ。いずれにしても、利上げの大部分は実施されており、株式マーケットの好材料となるのに十分だという見方が一般的である。
S&P500は年初来で15%上昇しており、ハイテク株中心のナスダック100は40%近く上昇している。その結果、評価額は過去と比べても、債券(株式のリスクプレミアム)と比べても割安ではなくなった。ファクトセットによると、S&P500の12ヶ月予想PER(株価収益率)は18.5倍と、10年平均の17.3倍を上回っている。しかし強気筋は、企業利益が底堅さを維持し、金利が上昇しない限り、株価は上昇する可能性があると主張している。
米国株の4つのリスク
ただし、リスクは残っており、4つ挙げられる。1つ目は、過度な金融引き締めはハードランディングのリスクが高まることだ。2つ目は、マーケットのハト派的な価格設定がFRBのタカ派的な予測に引っ張られて、資産価格の大幅な調整を引き起こす可能性がある。3つ目は、楽観的な収益見通しであるため、予測が外れる可能性がある。ファクトセットによると、アナリストはS&P500採用企業の利益が2023年第2四半期に減少すると予測しているが、2023年第3四半期には0.8%回復し、2023年第4四半期には8.2%も跳ね上がると予測している。4つ目は、季節性の観点からみると、7〜9月期は米国株にとって最も弱い四半期になる傾向があることだ。