※2023年3月10日12時32分更新
NYダウ、SVBフィナンシャル・グループ、シルバーゲート・キャピタル - APAC市場寄り付き
APAC市場まとめ – 米銀行株安と暗号資産市場の先行き懸念で下落リスク
9日の米国株式市場ではリスク回避ムードが広がり、ダウ平均先物は前日比1.69%下落した。S&P 500種株価指数とナスダック100指数も振るわず、それぞれ前日比1.85％、2.05％下落した。株式市場に対する投資家の心理状態を数値化した「恐怖指数」とも呼ばれるVIX指数は18.32%急騰し、1日の上げ幅としては2022年6月以来最大となった。トレーダーは資金の安全な逃避先を求めて米国債買いに動き、米国債利回りが低下し、米債券価格は上昇した。
米国株安を主導したのは米銀行株の大幅下落だろう。スタートアップやベンチャーキャピタル（VC）との取引で知られる銀行持ち株会社SVBフィナンシャル・グループが8日、17億5,000万ドルの自社株式売却を発表し、その翌日に同社株は60.41%急落した。ブルームバーグによると、この株式売却は、証券ポートフォリオ運用の悪化と、新興テックなど取引先の資金繰りが厳しくなったことを受け、資本増強の措置を講じたものという。スタートアップ投資が減速するなか、取引先企業が運転資金の確保のために預金を引き出すとの懸念が広がっている。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、資本と金利は歴史的な低水準が続いたが、パンデミックが落ち着いてくると信用状況が急速に悪化し、最もリスクの高い投資環境から資本を引き揚げる動きが続いている。株安につながっているもう一つの理由は、一般の家計が（国債などの）「無リスク」や譲渡性預金（CD）でも高い金利を享受できるようになったため、株式投資の魅力が損なわれていることである。
暗号資産（仮想通貨）も株式相場の重しになっている要因だ。ビットコインは9日、前日比6.14％安で取引を終え、下落率は昨年11月以降最大となった。これは、暗号資産関連企業からの預金を集めてきたシルバーゲート・キャピタルが8日に傘下銀行を自主的に清算すると発表したことが影響した。同社株は、2021年11月に記録した高値239.26から98％超の急落となった。
米国株安の流れを引き継ぎ、きょう10日のAPAC（アジア太平洋地域）市場では下落リスクが高まることが予想される。イベントリスクもまだ多く残されている。きょうは、日銀が金融政策を発表する。今年後半にイールドカーブ・コントロール（YCC）政策がどうなるのか、その手がかりを探ろうと投資家の注目が集まっている。そして10日の米国時間（日本時間10日夜）には、2月の米非農業部門雇用者数（NFP）が大きな注目を集めるだろう。
NYダウのテクニカル分析
日足チャートでは、ダウ工業株30種平均がフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準32,709を下方ブレイクし、シンメトリカル・トライアングルのチャートパターンからさらに下方に離れている。これにより、31,738－32,017のサポートゾーンが意識される展開となっている。一方、50日単純移動平均線（SMA）は引き続き、上値を抑える役割を果たしており、指数が上昇に転じた場合は重要なレジスタンスポイントとなるだろう。
日足チャート
資料：TradingView
--- DailyFX.com シニアストラテジスト ダニエル・ドゥブロスキー著
ドゥブロスキー氏に連絡するには、Twitter で @ddubrovskyFX までお願いいたします。
