米ドル円、為替介入、USD/JPY―トーキングポイント
- 内閣閣僚より、為替の動向を注視する旨の発言
- 口先介入の可能性は高まるものの、実際の為替介入の可能性は低いと見る
- ドル円は強気のシグナルが出ており、介入の可能性が低い中、一段のドル高円安へ



円の動向
米ドル円の水準は、円安に歯止めを掛けるべく昨年為替介入が実施された145円前後が近付きつつあり、為替介入に対する警戒感が高まりつつある。米ドル以外も含めた日本との各国の貿易額等で調整した日本円の実勢の水準を示す名目実効為替レートは70近くまで低下している。昨年為替介入を実施した際には約75であったので、名目実効為替レートの観点で、円は、昨年為替介入を実施した水準よりも弱く(安く)なっており、為替介入の可能性を示唆している。

資料:BloombergよりDailyFX.comが作成。赤丸は昨年の為替介入時と現在。
しかしながら、昨年の為替介入実施時と現在では、日本円及び米ドルを取り巻く状況が大きく異なっている。
昨年為替介入時
米FRBによる金融引き締めを発端として米ドル高が大きく進展していた。米ドル円が150円に到達した際には、「米ドル高」と「円安」という2つの力が働いていた。過度な「米ドル高」及び「円安」の是正のために米ドル売り円買い介入が実施された。米国当局としても米ドル高が過度に進展している中では、為替水準の安定化のためにドル売り介入は容認したと思われる。
現在の為替の状況
現在は米ドル円やJPY名目実効為替レートの観点では、昨年同様「円安」が大きく進展している。しかしながら、「米ドル高」は進展していない。米ドル円は141円台まで米ドル高円安が進展しているものの、日本以外も含めた米国との各国の貿易額等で調整した米ドルの実勢の水準を示す名目実効為替レートは130を下回っている。昨年の為替介入時は135前後であった。
日本円以外も含めた実勢では、現在の状況は「円安」のみであって「米ドル高」ではない(幅広い通貨に対して米ドル安が進展している)。米国当局は、日本がドル売り円買い介入を実施した場合、ドル安、輸入物価の上昇を通じて、米国のインフレ率が再度上昇する可能性が高まる。インフレ抑制に取り組む中、米国当局は、米ドル高が過度に進展しておらず、為替水準安定化のためのドル売り介入は容認しないと考える。また、昨年と異なり米FRBの利上げ終了が近付く中、米国当局は一段の米ドル高に対する懸念は抱いていないと思われる。そのため、日本当局は口先介入は実施したとしても、実際の為替介入の可能性は低いと考える。

資料:BloombergよりDailyFX.comが作成。赤丸は昨年の為替介入時と現在。
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | -6% | 8% | 5% |
週次 | -8% | 0% | -2% |
米ドル円の見通し
米ドル円の日足チャートで、テクニカル面で強気のシグナルが点灯している。
- 中立パターンであるシンメトリカルトライアングル(対称三角形)パターンを上方ブレイクし、米ドル高円安トレンドを示唆
- 米ドル高円安を示唆するダブルボトムパターンを形成
- MACDラインがシグナルラインを上抜け
強気のテクニカル面のシグナルに加え、実際の為替介入の可能性は低いと考えることから、一段の米ドル高円安進展を見込む。昨年10月から今年1月までの米ドル安円高に基づくフィボナッチリトレースメント61.8%水準142.50円への上昇が視野に入る。上方ブレイクすると、一段とドル高円安トレンドが鮮明になろう。
一方、口先介入などを背景に米ドル安円高が進展して場合、心理的節目である140円ちょうどでサポートされるかに注目。サポートされなかった場合、水平レジスタンスである138.422円をトライする可能性がある。
米ドル円日足チャート

資料:Trading View
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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著