トルコ中銀は金融政策決定会合にて利上げを決定した。エルカン中銀総裁就任以降、初めて市場予想を上回る大幅利上げであった。このような中、トルコリラの対円での見通しとは



サマリー
- トルコ中銀大幅利上げ
- TRYの下支えの手段は為替介入ではなく利上げ?
- トルコリラ円の今後の見通し
トルコ中銀、信用回復に向けた大きな一歩
トルコ中銀は金融政策決定会合を開催し、主要政策金利を7.5%引き上げ、25%とした(従来17.5%)。事前の市場予想2.5%を大幅に上回る引き上げ幅であった。大幅利上げを受け、通貨TRYは、対ドル、対円で大幅に上昇した。

資料:Trading economics
6月にエルカン氏がトルコ中銀総裁に就任後、高インフレ抑制のために利上げが実施されていたものの、インフレと比べて小幅な利上げにとどまっていた。大幅利上げには消極的と見なされ、トルコ中銀の信用回復に至らず、通貨トルコリラはエルカン中銀総裁誕生後も下落を続けていた。
今回の会合は、6月のエルカン総裁、そして7月下旬に米NY連銀勤務経験のあるエコノミストら正統派エコノミストを中銀副総裁に迎えて初の金融政策決定会合であった。中央銀行の主要ポストのメンバーが正統派エコノミスト等になったことで、中央銀行はインフレ抑制のための体制作りが完了し、大幅利上げに踏み切った可能性がある。
今回の大幅利上げは、トルコ中銀の市場からの信用回復につながる大きな一歩であろう。今後もインフレ抑制のための高金利政策継続との見方が広がるにつれ、トルコリラが一段と上昇する可能性がある。
トルコでは、TRY安が続く中、為替介入を実施し、通貨を下支えしてきた。しかしながら、為替介入によってトルコリラ安を止めるには至らなかった。為替介入を実施すると、介入原資である外貨準備高が減少する。外貨準備高は減少を続けてきたものの、足元増加に転じている。これは、トルコ中銀が、トルコリラを下支えするために、為替介入ではなく積極的な利上げを継続していくことを示唆している可能性がある。

資料:BloombergよりDailyFXが作成。



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トルコリラ/日本円の見通し
TRYは、トルコ中銀の7月までの消極的な利上げを受け、1TRY当たり5.00円近辺までトルコリラ安が進展した後、緩やかなトルコリラ高円安が進展していた。
8月24日会合でのトルコ中銀による大幅利上げを受け、心理的節目である5.50円を上方ブレイクした。また、5月以来初めて9日指数移動平均線が20日指数移動平均線を上抜ける強気の「ゴールデンクロス」が成立しており、テクニカル面でトルコリラ高シグナルが点灯している。
更に、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長がジャクソンホール会議にて25日に講演を行う。FRBの利上げ終了との思惑が高まった場合、リスクオンの流れが強まり、5月26日から7月18日までのトルコリラ円の値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント38.2%水準5.79円への上昇を見込む。上方ブレイクし、TRY高トレンドに衰えが見えなかった場合、5月から7月のトルコリラ安円高の半値戻しの水準6.03円が視野に入る。
一方、ジャクソンホール会議にてFRBの追加利上げ、高金利維持との思惑が高まった場合、トルコリラ円は5.50円でサポートされるかに注目。サポートされた場合、トルコリラ高円安地合いが強まっていることを投資家に印象付けよう。
TRYJPY日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著