原油、WTI、FRB、ロシア、ウクライナ、米CPI - トーキングポイント



10日のニューヨーク・マーカンタイル取引所で原油先物相場は6営業日ぶりに反落。ウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)原油先物は前週末比約2.5%下落し、9月26日以来、最大の下落率となった。 先週は17%近くも上昇したにもかかわらず、である。先週の大幅上昇は、今年初めからエネルギー価格が下落している中で、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟国で構成されるOPECプラスが今後数カ月間、原油生産を減らすことで合意し、供給削減により原油需給が引き締まるとの見方が強まったことが引き金となった。
世界経済の景気動向に連動しやすい原油市場では今週の取引を始めるにあたり、世界の国内総生産(GDP)成長率が鈍化するのではとの懸念に注目していた。米連邦準備制度理事会(FRB)のラエル・ブレイナード副議長は10日に講演し、40年ぶりの高インフレ抑制に向けてFRBは引き続き、抑制的な金融政策を続けると改めて表明した。ブレイナード副議長は、1970年代のFRBの行動を引き合いに出し、時期尚早に緩和的な政策に転換することのリスクも強調した。シカゴ地区連銀のチャールズ・エバンス総裁も講演し、同様のメッセージを発した。
市場センチメントに左右されやすいコモディティ相場は、米国株の下落に追随した面もある。FRBのタカ派的な発言により、特に先週、堅調な米雇用統計が発表された中で、世界的な景気後退の懸念は引き続き高まっている。10日のハイテク株比率が高いナスダック100指数は前週末比1%超下落した。米国政府が、米国の半導体技術への中国のアクセスを制限する措置を続けると発表したことも痛手となった。
ウクライナとロシア間の緊張の高まりは、原油相場の上昇にほとんど寄与しなかったように見える。ブルームバーグによると、ロシアによるウクライナの首都キーフへの最近のミサイル攻撃は、「侵略開始以来、最も激しい弾幕」であったという。これは、週末にウクライナがクリミアとロシアを結ぶ重要な橋を爆破したとして、ロシアのプーチン大統領がウクライナを非難した後の出来事である。
WTI原油先物は13日の米インフレ指標待ちとなっており、コモディティ市場にとって地政学的リスクは引き続き不確定要素となるだろう。9月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.1%上昇と、前月(同8.3%上昇)から上昇幅は縮小すると見られている。一方、食品とエネルギーを除くCPIコア指数は同6.5%上昇と、前月(6.3%上昇)から上昇すると予想されている。コア指数のような動きをFRBは望んでいない。発表数値が予想を上回れば、金融市場のボラティリティは簡単に高まり、原油相場は下落する可能性がある。
原油相場 テクニカル分析 - 日足チャート
10日のWTI原油先物は、90.37の変曲点まで反落した。当面のレジスタンスは引き続き、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準94.37だろう。価格は、50日単純移動平均線(SMA)に加え、9月下旬から上昇している短期サポートラインも上回っている。この2つのラインを下抜けた場合、下降トレンドが再開する可能性がある。上値では、97.65が8月高値となっている。

資料:TradingView
--- DailyFX.com ストラテジスト ダニエル・ドゥブロスキー著
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