WTI原油、OPECプラス、中国、リオープン、PMI、テクニカル―トーキングポイント
- OPECプラス会合を巡る不透明感続く
- 石油消費世界第2位の中国でPMIが公表、依然として製造業は苦しむ
- このような中、原油価格のテクニカル面での動きは?



6月4日に控えるOPECプラス会合での原油の追加減産や米国債務上限の効力停止を巡る議会採決を巡る不透明感を嫌気し、WTI原油価格は70ドルを下回った。5月初め以来の60ドル台である。また、イランと国際原子力機関(IAEA)間の核施設を巡る問題の一部が解決したとの報道を受け、イランに対する経済制裁の緩和が進むことで原油供給が増えるとの思惑も原油価格の重石となった。
4月中旬以降原油価格は低迷しているが、背景に中国の経済再開(リオープン)が期待したほど強くないことが挙げられる。昨年末のゼロコロナ政策撤廃以降、世界第2位の石油消費国である中国の急速な景気回復期待が高まった。しかしながら、原油を多く使用する製造業を中心に景気回復は緩慢なものに留まっている。中国リオープン期待が萎むにつれ、需要低迷との見方から原油価格は低迷している。
4日のOPECプラス会合での追加減産の行方に加え、中国の景気回復の行方は原油価格の動向に重要であるが、中国にて景気先行指標である購買担当者景気指数(PMI)が公表された。PMIは50を下回ると不況であり、上回ると公表であることを示唆する。製造業は48.8と50を下回り、前回より悪化、サービス業も50を上回ったものの、54.5と前回より悪化した。PMIの結果は、中国の景気回復スピードは依然として緩やかであることを示し、中国需要に伴う原油価格の上昇は短期的に期待できない結果であった。
中国PMI

短期的にはOPECプラス会合での追加減産の行方が原油価格を左右しよう。ロシアとサウジアラビアの間で追加減産を巡って意見が対立しているが、追加減産が決定された場合、4月のようにWTI原油価格が急騰する可能性がある。一方、追加減産が見送られた場合、需給の緩みが意識され、一段安も視野に入る。テクニカル面では、緩やかな上昇トレンドに入りつつあったものの、昨日の急落で下落トレンド入りが鮮明になっている。詳しく見てみたい。
原油先物価格のテクニカル分析:上昇トレンド消滅・・・
4時間足で、足元の急落を受け、5月15日以降の連続する高値と安値の切り上がりが途絶え、緩やかな上昇トレンドが終了した。また、9、20、50、200期間指数移動平均線が下向きかつ、下から順に並ぶ弱気の「逆パーフェクトオーダー」が成立している。
WTI原油4時間足チャート




資料:Trading View
日足チャートで、5月に入り中立パターンであるシンメトリカルトライアングル(対称三角形)パターン内で推移していたが、パターンの下限を下抜け、下落トレンド入りを示唆している。
5月に入り、上昇圧力が徐々に強まりつつあったが、昨日の下落で、テクニカル面では下落トレンド入りが鮮明になっている。米エネルギー省から戦略石油備蓄(SPR)補充のための原油購入観測が高まる水平サポートライン67ドルでサポートされるかに注目。
WTI原油日足チャート




資料:Trading View
-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著