WTI原油、IGCS、ヘッジファンド―トーキングポイント



原油価格が上昇している。このような中、個人トレーダーは原油のショートポジションを増やしている。これは、IG顧客センチメント(IGCS)を見れば分かる。IGCSは時に逆張り指標として機能することがある。IGCSからは最近、強気のシグナルが出されている。また、ヘッジファンドは原油先物のロング(買い持ち)ポジションを極端に減らしており(原油価格の下落要因)、一段のロングポジションの削減余地は限定的と見込む。詳しく見てみたい。
原油の個人トレーダーセンチメント:強気
IGCSによると、原油を取引する個人トレーダーの約66%がネットロング(原油を買い持ち)にしている。半分以上の持ち高はまだネットロングに傾いているため、価格は低下する可能性を示唆している。しかしながら、先週から、ネットロングのトレーダー数(原油価格に対して強気なトレーダー)は16.32%低下、ネットショートのトレーダー数(原油価格に対して弱気なトレーダー)は101.68%上昇している。原油価格に強気なトレーダーが減少し、弱気なトレーダーが増えていることを考えると、IGCSは逆張り指標として機能することがあることから、原油価格は上昇する可能性がある。
IG顧客センチメント:原油




資料:IG顧客センチメント
ヘッジファンド等のポジション:強気
原油価格の低迷を受け、ヘッジファンド等(投機筋)は先行きに悲観的になっている。原油先物市場のネットロング(ロング―ショート)のポジションは2012年来の低水準である。しかしながら、一段のネットロングポジションの削減余地は限定的と見る。まず、年初に高まっていた中国景気の急回復に対する期待は既に萎んでおり、原油価格に対する一段の下落圧力は限定的と見込む。また、景気下押し圧力となる中央銀行による利上げ、金融引き締めは最終局面に近づきつつある。更に、サウジアラビアやロシアは原油の減産・価格安定に向けて協調姿勢を示している。このことを考えると、ヘッジファンド等は、既に低水準のネットロングポジションを一段と削減(原油価格に悲観的になる)する余地は限定的と見込む。原油価格が安定化するにつれて、再度原油のロングポジションを積み増し、原油価格の上昇要因となる可能性がある。

資料:BloombergよりDailyFXが作成
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 24% | -15% | -2% |
週次 | 10% | -13% | -5% |
原油価格見通し:ゴールデンクロス成立
原油価格は、4月4日以来初めて9日指数移動平均線が50日指数移動平均線を上抜ける強気の「ゴールデンクロス」が成立し、下落トレンドから上昇トレンドへ転換したことが鮮明化しつつある。
原油価格の上値として、6月5日高値74.92ドル(1バレル当たり)が視野に入る。更に上昇の勢いが衰えなかった場合、4月末の高値76.72ドルへの上昇を見込む。
一方、下値として、最近のレジスタンスであった50日指数移動平均線(現在71.82ドル)でサポートされるかに注目。下抜けた場合、最近の上昇が一時的と投資家に印象付け、70ドルへ下落する可能性が高まる。
WTI原油価格日足チャート

資料:Trading View
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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著